司法書士の下東です。
今日は，ヤミ金と既に取引されている方にとっては少々厳しい話をします。
ヤミ金に融資申し込みをすると，業者はあなたの個人情報を色々と聞き出してきます。
携帯電話番号，メールアドレス，自宅住所，勤務先名，勤務先住所，勤務先電話番号，家族構成，実家の電話番号・・・
この辺りまでは当然に聞かれることだと思います。
自己の個人情報の範疇ですので，言ってしまったとしても止むを得ないところでしょうし，言わなければ融資を受けることは出来ないでしょう。
ただし，教える場合は，返済を止めた場合に会社に迷惑がかかる，会社をクビになる等のリスクを十分に考慮した上でご決断ください。
なお，最近のヤミ金は年利2000％超の金利を要求してくることから，借入が１社に留まればまだしも，複数社になってしまえば完済して取引を終えることはほぼ不可能であることを付言しておきます。
問題は次です。上記に加えて，ヤミ金から親兄弟，友人知人等の勤務先を聞かれることがあります。
この場合は絶対に応じてはいけません。
本人以外の方の勤務先を含めた連絡先を教えないと融資しないというヤミ金もいるようですが，そんなところからは絶対に借りないでください。
あなただけが不幸になるのであれば自己責任ともいえるでしょうが，例えばご兄弟の勤務先にヤミ金からの嫌がらせの電話が入り，その結果ご兄弟がクビになった（あるいは会社に居づらくなって依願退職した）場合どう責任を取るおつもりですか。
まさか会社を辞めることになんかならないだろう・・・
この様にお思いでしょうが，私は過去に何件もそういう相談を受けています。
以下，仮にご兄弟の勤務先をヤミ金に教えてしまった例で想定される結末をご紹介しましょう。
ヤミ金は，あなたが返済約束を履行しない場合，支払しなければ，ご兄弟への請求を開始するとあなたを脅します。
あなたは必死に金策をするでしょうが，あなたが借りられる先はヤミ金くらいしかないはずです。
止むを得ず他のヤミ金から借り入れをします。しかし，ヤミ金の返済周期は極めて短いですからすぐにまた返済日が到来し行き詰ります。
いよいよ返済が滞ったとなれば，ヤミ金はご兄弟の勤務先への連絡を開始します。この際，ヤミ金はご兄弟自身に金を貸していると主張して勤務先に連絡します。
わざわざ自分はヤミ金だと明かした上で，
「○○さんに金を貸しているが返してもらえないので連絡した」
と言うのです。
こうなるとご兄弟の社内における信用は一気に地に墜ちることでしょう。
自分ではない，兄弟が借りているんだと弁明したところで（そういう家と見られてしまうので）信用回復は難しいでしょうし，全くの事実無根と主張しても，１００％信用してもらうことは出来ないでしょう。
こうして，ご兄弟はあなたのせいで会社での信用を失うことになり場合によっては退職を余儀なくされます。
身内の連絡先を言えないのなら貸せないと言われた
言わないということは踏み倒すつもりなのかと言われて答えるしかなかった
ちゃんと返済するつもりだったので問題ないと思った
ヤミ金から借り入れをしたご本人の言い分はこうです。
そして，
自分はどうなってもいいから他の人に迷惑がかからないようにしてほしい
と依頼にいらっしゃいます。
しかし，そういう気持ちがあるのなら借入時になぜ踏みとどまれなかったのでしょうか。
あなたは，いわばヤミ金から他人の個人情報を担保に金を借りたのです。これには，返済しなければその個人情報をどのように使われても構わないという暗黙の了解が含まれています。
恐らくあなたは法定金利内の貸金業者に対しても返済がままならない状況だった方なのではないでしょうか。
そうだとすれば，それらの業者の１００倍以上の金利を取るヤミ金に対して返済をしっかり続けられると思う根拠はどこにあるのでしょうか。
このように，ヤミ金に他人の情報を教えると，その方の人生にも重大な不利益を及ぼすことがあります。今回は勤務先の例でご説明しておりますが，例えばご子息の学校を教えてしまった結果，学校に次々と嫌がらせの連絡が入り，転校を余儀なくされる等の実例もあります。
ヤミ金が何かしらの情報を求めるのは，当然，回収のことを考えてのことです。
ヤミ金は，訴訟等の適法な手段による債権回収はできませんから，その分，債権保全の方法として多数の連絡先を確保しようとします。
その連絡先は，言い換えれば，嫌がらせ先でもあります。
単に嫌がらせで済めばいいのでしょうが，ヤミ金業者の質如何によってはそれでは済まないことがあります。
さて，上記に述べたことは，既にヤミ金に対して他人の勤務先等の情報を教えてしまっている方にとっては大変厳しい内容でしょう。
あなたがそういう方の場合は，その他人の方に迷惑をかける前に，一刻も早くヤミ金問題解決のための行動を起こすべきでしょう。
ヤミ金からの借入を検討中の方であれば，この記事を読んでどうか思いとどまっていただきたいものです。
しかし他に手段がなくどうしてもヤミ金から借りざるを得ない場合は，せめて，他人の情報を漏らすことのないようお願いしたいと思います。
すみませんでした。