ヤミ金が取得する私製手形

公開日:2014/01/24更新日:2018/11/19

カテゴリー:司法書士 タグ: , ,

司法書士の下東です。

事業者向けに活動しているヤミ金については,先日,システム金融対策で書きましたが,実のところ,現在では手形や小切手を担保に取るヤミ金は少数派であり,そういうものを取らない業者や,取ったとしてもいわゆる私製手形を切らせる形式の業者の方が多い様に思われるので,本日はその点について少し書きたいと思います。

私製手形というのは,銀行や信金発行の統一手形用紙を用いた手形ではない手形のことであり,おもちゃ手形などと呼ばれることもあります。

見た目は様々ですが,統一手形用紙と同じ体裁のものもあれば,A4用紙に「約束手形」と記載し,その他の手形要件を具備したものに過ぎないものであったり様々です。

銀行発行のものでないため手形交換に回すことは出来ず,したがって取引停止処分を受けることもありません。

しかし,法律上の要件を満たせば手形としては有効であるため,この点に目を付けたヤミ金が手形制度を悪用し,担保目的で事業者に私製手形を振り出させて融資を行うということが横行しています。

私製手形は怖くない

私製手形を一躍有名にしたのは,株式会社商工ファンド(その後株式会社SFCGに商号変更・現在破産手続中)です。

手形には手形訴訟という通常の訴訟より簡易・迅速に判決を得られる制度があります。

あまり時間をかけずに強制執行に進むことが出来るため,その点に着目した商工ファンドは,貸付けの際に私製手形を取得し,支払いが滞った際にはすぐに手形訴訟を提起して回収をかけていました。

しかしその後,商工ファンド(SFCG)が提起する私製手形による手形訴訟は,東京地裁によって,手形訴訟制度濫用にあたり不適法とされて却下判決がなされています(手形訴訟としては扱わないということ)。

以後,SFCGが提起する私製手形による手形訴訟は封じられ,また,他の貸金業者においても私製手形を用いた回収手法は用いられていません。

上記事例では,私製手形による手形訴訟は今後一切受け付けないと判示されたわけではないため,例えば,一般の方が債権の保全目的で私製手形を取得し,手形訴訟を提起することを妨げるものではありません。

しかし,ヤミ金の場合は,上記事例と同様に却下判決となる可能性が高いといえるでしょう。

また,ヤミ金は,自らの素性を明らかにしないからこそ,暴力的・威迫的な回収をかけることが出来るわけですが,訴訟となれば表に出て来ざるを得ないため,現実には訴訟など起こしません。

実際に,私は,以前に所属していた事務所での経験を含めると私製手形を取得されているヤミ金の事例に100例以上関わっていますが,手形訴訟(通常の訴訟も含む)を提起されたことは一度もありません。

よって,ヤミ金に私製手形の作成をさせられていたとしても,それは,法的に回収をかけられるかも知れないという心理的圧力を与えて,回収を有利に進めるためのものに過ぎないのです。

ですから私製手形を過度に恐れる必要はありません。

それよりも,ヤミ金と取引を継続することにより事業の再建が不可能となることを恐れてください。

ヤミ金との取引が長ければ長い程,会社の寿命は短くなります。

会社を潰されてしまうことのないよう,ヤミ金被害は早めに専門家に相談されることをお勧めします。

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