コロナ禍が引き金に|闇金に借り入れし自転車操業に

Iさんは契約社員として工場で働いています。まじめな仕事ぶりが評価され、これまで定期的に契約更新を重ねてきました。堅実に生活をしてきたIさんでしたが、コロナ禍で工場の稼働が止まり、この数年で手取り収入は大きく減少しました。
仕事の再開後も状況はすぐには戻らず残業はほとんどゼロに。「給料日を迎えても、通帳に入る金額が半分近くになっていて…本当にきつかった」と当時を振り返ります。こうして生活は一気に苦しくなっていきました。
コロナ禍で収入が落ち込む中、Iさんは休業手当や緊急小口資金などを申請・受給しながら当面をしのいでいましたが、支出は減らず限界が近づいていったのです。
「このままではもう生活が立ちゆかない」と思ったIさんは、当時需要が急速に高まっていた「先払い」型の業者に頼るようになりました。
先払い業者に借り入れを始めた当初、Iさんは「一時的に借りてすぐ返せばいい」と考えていました。しかし、気づけば借りては返し、返してはまた借りる自転車操業に陥っていきます。
そして、毎月の支払に追われるようになると、先払い業者だけでなく、SNSを使って勧誘・取引を行う“SNS型闇金”(いわゆるLINE闇金)とのやり取りも増えていきました。
一度は完済して関係を断てたと思っても、支払いに行き詰まれば再び借りてしまう、その繰り返しの中で、いつの間にか「借り入れが前提の生活」になっていったといいます。
「まるで闇金への返済のために働いてるみたいだった」——その言葉から、Iさんの精神的な疲弊がどれほど深かったかが伝わります。
最終的に借入先は20社近くにまで膨らみ、督促のメッセージは日増しに増加。返済期日が来るたび胃が痛む日々を過ごし、知り合いの業者から次の業者を紹介される連鎖も止まらなくなりました。
ついに限界を感じたIさんは、当事務所をネットで調べ、お電話をくださいました。
自転車操業からの脱出|専門家への相談で見つけた出口

先払い業者との取引を続けるうちに、より手軽に借りられるLINE闇金にも手を伸ばすようになり、そこから借入先がどんどん増えていきました。気づけば複数の業者と同時にやり取りするような状況になっていたのです。
最終的には、どこに、いくら借りているのかすら分からないほど混乱しており、精神的にも限界を感じておられました。
Iさんとともに履歴を一つひとつたどり、全ての業者を特定したうえで交渉を重ねた結果、先払い業者は債権放棄に応じ、闇金からも「手を引く」との返答を得ることができました。
対応の途中で非通知や見覚えのない番号から連絡が入ることはありましたが、恐れていた職場や緊急連絡先として教えた家族等には闇金からの連絡はなく、最終的にすべて穏便に解決することができたのです。
Iさんは「もう限界だと思っていましたが、相談して本当によかったです」と安堵された様子でした。
もともとコロナの影響で生活苦が始まったIさんですが、現在は職場の契約更新も済み、仕事も元通り。残業も再開し、収入は安定しています。「今後は闇金とはキッパリ縁を切り、違法業者に借り入れすることなく生活していきます」と力強い決意を語ってくださいました。
≪すぐに使える生活支援制度まとめ(2025年現在)≫
生活が本当に苦しいときに、安心して相談できる行政や公的制度を活用することで、少しずつ生活を立て直すことができます。
2025年現在も利用できる代表的な制度をまとめました。
生活福祉資金貸付制度
- 窓口:各市区町村の社会福祉協議会
- 内容:低所得世帯や高齢者世帯などを対象に、生活費・一時的な資金などを貸し付ける制度
- 特徴:貸付限度額は資金の種類によって異なる(例:総合支援資金は月20万円以内)
[公式情報]全国社会福祉協議会
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付条件等一覧
生活困窮者自立支援制度
- 窓口:各市区町村の自立相談支援機関
- 内容:生活再建のための相談支援、就労支援、家計改善支援、食料や生活用品の支援など
- 特徴:貸付ではなく、生活全般の相談と支援が中心
[公式情報]厚生労働省
制度の概要
⚠️注意点
• 「緊急小口資金・総合支援資金(特例貸付)」は コロナ禍の特例として実施された制度で、現在は終了しています。
• 最新の制度は必ず 市区町村の窓口や公式サイトで確認するようにしてください。
Iさんのように「最初は一度だけのつもりで借りたのに、気づけば闇金に依存し、自転車操業から抜け出せなくなっていた」という方は少なくありません。返済のために借り、また返すために別の業者に借りる——その悪循環は、誰にでも起こり得ます。
違法業者に一度でも連絡先を伝えてしまうと、その後も勧誘の電話やメッセージが続き、精神的な負担はますます大きくなります。そうした被害を断ち切るためには、早い段階で電話番号を変更したり、利用しているSNSを退会することが最も有効です。勧誘や督促のルートを断ち切るだけでも、追い立てられる感覚が大きく軽減され、心の余裕が取り戻せます。
すぐに番号変更や退会ができない場合でも、着信拒否の設定やSNSアカウントに鍵をかけて外部からの接触を遮断することで一定の効果は得られます。まずは取れる対策から始め、業者との新たな接点を作らないことが重要です。
そしてもうひとつ大切なのが、専門家へ相談することです。Iさんも思い切って相談したことで、職場や家族への迷惑を避けながら、すべての取引を穏便に解決することができました。自分だけでは解決が難しい闇金や自転車操業の問題も、専門家の介入によって出口が見えてきます。
さらに、行政には生活福祉資金貸付制度や住宅確保給付金、生活困窮者自立支援制度など、借金に頼らず生活を立て直せる公的支援が用意されています。こうした制度を活用することで、生活の再建に向けた確かな一歩を踏み出すことができます。
闇金や自転車操業で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、ぜひ早めにご相談ください。