司法書士の下東です。
振り込め詐欺に関する報道がなされる際,良く「出し子」とか「受け子」などという用語を耳にしますね。
意味をご存知ない方のために念のため簡単に説明しておきますが,「出し子」は,詐取したお金を口座から引き出す役目のことで,「受け子」は,路上等で受け取る役目のことを指します。
この出し子や受け子ですが,振り込め詐欺の場合は,高額な報酬につられてアルバイト感覚で手を出してしまう若者が多いようですが,ヤミ金被害の場合は,ヤミ金被害者が知らぬうちに出し子の役目をさせられてしまうケースがあります。
今回はそうした被害事例をご紹介します。
ヤミ金は,危険な出し子は被害者にやらせている
本ブログでは何度も取り上げていますのでご存知の方が多いでしょうが,ヤミ金は,他人名義の銀行口座を利用しています。
この他人名義の銀行口座は,銀行や警察からみれば,犯罪に使われていることが一目瞭然です。
このような口座はすぐに凍結されることになっており,ヤミ金もそうしたことは知っているので,ヤミ金は,口座に入金があり次第,凍結リスク避けるため直ちに他の口座に資金を移転します。
しかし,資金を移転した先の口座についても,資金移転元の銀行から移転先の銀行へ情報提供が行われ,移転先銀行でも口座凍結を実施するため,単に振込みによって資金を移動するだけでは,ヤミ金は安心して犯罪収益金を保持することが出来ません。
そこで,出し子を使って一旦預金を引き出す必要があるわけですが,この出し子は,ヤミ金をやる上で一番逮捕のリスクを負う役目です。
当然進んでやりたがる者は少なく,また,振り込め詐欺の様に一度に数百万の収益が上がるわけではないので,アルバイトを使うにも限度があります。
そこで活用されるのが被害者です。
ヤミ金は,被害者の中から信用出来そうな者(弱みを多く握っており,言いなりになる者)を選び,その者に対し,出し子をやるよう持ちかけます。
被害者としては,ヤミ金の出し子をやるということはヤミ金に加担するということであり,当然躊躇はするのですが,その一方で,返済に汲々としているわけですから,今回分の利息を免除してやるなどと言われると,それに釣られてしまうのです。
やることは単純です。
ヤミ金が振り込んできたお金を引き出し,それを指定口座に現金振込するだけです。
誰にでも出来ることであり,これであなたは犯罪者の仲間入りです。
この様に,被害者の立場であり,ヤミ金被害の恐ろしさを熟知しているはずの方が,ヤミ金に加担して出し子をやるというケースが多く見られます。
実際に逮捕されるリスクの高い行為ですので,ヤミ金の口車に乗らないよう十分に気を付けてください。
知らないうちに出し子をさせられているケースも
報酬を得て(又は利息の免除を得て)出し子をやったケースは,弁解の余地がなく,ヤミ金に加担していたというほかないですが,これとは別に,知らないうちに出し子をさせられてしまっていたというケースも散見されます。
具体的には,ヤミ金が突然被害者の口座にまとまった金額の現金を振り込み,被害者方に電話して誤送金してしまったと言いながら,一旦引き出しさせ,指定口座に現金振込みさせるというものです。
こうしておけば,出し子への報酬は不要ですし,ヤミ金と被害者は面識がないため,仮に被害者が逮捕されたとしてもヤミ金側に累が及ぶこともありません。
一方被害者は,何も知らずに出し子的役割をやらされたのだとしても,後日警察から呼び出しがかかり,事情を聴かれたり,場合によっては逮捕される等のリスクを負うこととなります。
ヤミ金と付き合うと,携帯や口座を売らされたり,口座を凍結される可能性があったり,出し子の役割をさせられてしまったりと良いことは何もありません。
目先の利益に釣られてヤミ金と付き合うことのないよう,改めてお願いしたいと思います。