融資を受けるためにキャッシュカードを郵送してしまった。もしかして逮捕されるの?というご相談が当事務所へも多数寄せられています。
キャッシュカードを送れ,などと要求してくるのが振り込め詐欺などを行う違法業者であるというのは,近年テレビ番組などでも取り上げられることが多いために誰もが認識できる周知のことと思いますが,送った本人も処罰の対象となるのかという点に関しては必ずしも周知のこととは言えないでしょう。これに関するご質問をよくいただきます。
他人に譲渡する目的で自分名義の銀行口座を開設し,キャッシュカード等を譲り渡すことは銀行に対する詐欺となることがありますし,犯収法でも禁止されていることなので,立派な犯罪行為にあたります。
闇金業者は,もし返済できないのであればあなた名義の口座を開設し,それをこちらに渡すことで借金返済の代わりとする,という要求をすることがあります。借金の返済を免れるために,請求されたお金を支払うか,銀行口座を譲渡するか,という選択肢が与えられるわけです。
どちらも返済の方法という点では同じだが,お金で返済した人は闇金被害者として全額返還請求できる(もっとも実際に返還される可能性はきわめて低いが)のに対し,口座譲渡で返済した人は闇金業者と同じ穴のムジナで逮捕されるおそれがある。このようにして闇金業者は,守られるべき被害者を,刑罰の課される犯罪者へと陥れるのです。
先日もこのようなニュースがありました。
キャッシュカード売り渡した疑いで女逮捕 還付金詐欺で被害も
自称アルバイトの原 裕香容疑者(31)は、2016年5月、「銀行口座を5万円で買い取る」というインターネット上の広告を見て、自分名義のキャッシュカード1枚を売り渡した疑いで逮捕された。
口座は、およそ200万円の被害が出た、還付金詐欺の振込先として悪用されていた。
原容疑者は、容疑を認めているという。
フジテレビ系(FNN) 7月21日(木)1時23分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160721-00000030-fnn-soci
上記容疑者もある意味では犯罪被害者の一人と言えるでしょうが,たとえ無自覚で口座を渡してしまったとしても,それが闇金被害を生み出す道具になっている以上,許されるべきではないでしょう。
新たな被害者を出さないよう,闇金業者や還付金詐欺業者の手口やそれらと関わってしまったときの危険性を,もっともっと多くの人に知ってほしいと思います。