元金和解は闇金被害の解決につながるのか?

公開日:2016/11/23更新日:2016/11/23

カテゴリー:相談員

事務の横田です。

当事務所では、たとえ返済額が借入額に満たない場合でもその差額を返済するという形の和解は、ご依頼主の強い要望があるような極めて例外的な場合を除いて行っていません。

むしろ今後一切お支払いをしないということを度重ねて念押ししています。

闇金側の落とし所は‟元金和解”

闇金業者は、当事務所のような専門家が介入するとまず元金を支払って手打ちにするという,いわゆる元金和解提案をしてきます。

闇金も、専門家が入った以上その案件は面倒なので手打ちにした方がよいと判断する場合がほとんどですが、それでも最悪赤字にならないように努めることは闇金側の立場からは当然とも言えます。

せっかく捕まえた客だけど、専門家が入ったら仕方ない、せめて赤だけは出さないようにしたいと考える業者がほとんどです。

だとすればその客との取引は終わりになるが、そこから取立てを継続して行うことは闇金の営業面でも正しい判断とは言えません。せいぜい駄目押しで一度電話を入れる程度で終らせるでしょう。

そこで穏便に終わらせようと、業者から受け取った額までは返済して和解をするという選択肢が浮かんできます。

闇金は本当にマイナスなのか?利益を得る構造

ところで取引件数が多い方の場合、数ヶ月取引をしていてトータルで相当に過払いになっている業者が2,3件と、まだ1ヶ月以内の取引で少額だが受取額に満たない、あるいは一度も返済していない業者が数件というケースが多いのですが、グループで役割分担して動く闇金業者による返済のための借入れを行わせるという典型的な手口によってグループ全体として赤字にならないような仕組みになっていることは明らかです。

そして借り手の方は、過払いになっていて早々に手を引いた穏便な業者のことは忘れ、まだ一度も返済できていない短期業者だけが気がかりになります。

多方面への支払いに窮して自ら借入れたのに相手に損をさせているという負い目を感じるわけですし、周囲の人からも流石に自分から借りていて一円も返してないなんて、いくら相手が違法業者とはいえ非常識な人だという冷たい目で見られがちです。

このような構図になっていることを考えると、末端の短期業者への未払分を合わせても全業者への支払額トータルは充分に過払いになっている場合が多いですから、結局はそのグループには一定の利益をもたらしていることになります。その状態で足りてない分を返すことになれば、業者側にはさらに多くの儲けが出る結果となるでしょう。

また、「この1社だけはうるさく取立てを行っている。ここだけでも返せば、他は手を引いているんだし、すぐに完全解決するのではないか」と考えるのも危険です。

業者同士繋がりがある以上、あいつは追い込めば金を払う奴だと判断されて、動きを止めていた他の業者も一斉に追い込みを始める恐れがあります。

このように闇金を業者単位でみると判断を誤ってしまうのです。

元金和解は闇金問題の根本的解決にならない

闇金から受け取った元金を返還する義務はありません。犯罪によって巨万の利益を得るための元手を取り戻すなどということを法は認めていません。

近年のヤミ金融対策のための法整備の目的も、一般大衆の財産を守るのみならず、闇金業者全体の撲滅、つまり闇金をやっても損をする仕組みを作ることで闇金業界そのものを弱体化させることにあるのは明らかです。また、近年のヤミ金に関する裁判の動向も同じような方向性を示しています。

いわゆる元金和解を無条件に勧める法律専門家は一定数いますが、支払っての解決は先に示したとおり闇金被害者のさらなる困窮を招いてしまうだけであり、何の救済にもなりません。

のみならず、闇金は「当たれば大儲け、当たらなくても損はしない」という反倫理的な考え方を助長してしまうことになります。

支払って解決はまったく非合理ですし、専門家などもそのような対応を続けている限り闇金は永遠に無くなりません。

悪質な闇金だけを弱体化させればいいのではなく、業界全体として弱体化させなければ、闇金被害をなくすことはできないでしょう。

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