裁判例でみる闇金事件簿その1-超高金利-

公開日:2018/07/06更新日:2018/08/08

カテゴリー:相談員 タグ:

裁判所

こんにちは。相談員の角田です。

今日は平成21年1月30日に大阪地方裁判所で下された裁判例を用いて、闇金被害の実態と、その教訓についてお話したいと思います。

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事件の概要

被告Xらは、貸金業者の登録のない闇金組織であり、被害者のV₁に対して、2回にわたり合計3万2160円を交付した。Xらは、債権の回収を口実に、Cに過酷な脅迫を行い、2か月足らずの間に合計34万3195円の支払いをさせた。

その結果、V₁と夫V₂、兄V₃は自殺以外にXらの取立てから逃れる方法がないとの心理状態に追い込まれ、3人はJR線路に飛込み、自殺した。

という悲惨な事件です。

裁判所の認定した事実

裁判所の認定した事実は次のとおりです。

(1) Xらの組織について

Xらは、銀行口座への貸付金の振込みや利息の回収を行う「現金管理部門」、顧客情報等を管理し、貸付けの可否を審査する部門である「センター」、実際に融資を勧誘し、取立てを行う複数のグループである「実行班」という組織によって、出資法の上限利率を著しく超えた高金利での貸付けを行う、いわゆるヤミ金融組織である。

実行班は、低利息で融資をする旨記載したダイレクトメールを無差別に郵送し、申し込んで来た顧客から、信用調査のためと称し、顧客の氏名、住所、職場、親戚及び近隣住民等の連絡先を聞き出し、一度電話を切る。実行班の担当者は、顧客の借入れ状況等をセンターに確認する。

そして、貸し倒れの危険がないと判断した場合、再度顧客に電話をし、「低額の融資から始めて、実績を作ってもらいます。」「3万円の融資であれば、1週間の利息は1万円になります。3万円を返済すれば完済となりますが、払えないときは、1週間毎に1万円ずつ利息を支払えば、期限を延期します。」などと説明する。

そして3万円の貸付けであれば、利息1万円を天引きした2万円を交付し、1週間ごとに利息を支払わせ、その結果、実際の利率はダイレクトメールに記載された利息ではなく、出資法の上限利率を遥かに超える、年利数千%となっていた。

(2) 取立方法

支払いが滞った顧客に対して、実行班の担当者は、電話で「会社や親戚に電話をするぞ。」「近所に電話をかけまくって、ここに住めなくしてやるぞ。」「殺すぞ。」等と脅し、実際に近隣者や親戚等に電話をすることもあった。

他方、支払いを行った顧客に対しては、「完済するとは事前に聞いていない。」などと、因縁をつけて完済を認めず、利息を払い続けさせた。また、返済日が休日にあたる場合、休日明けに振り込んだ顧客に対して、「休日前に振り込まなかった」と因縁をつけ、「迷惑料」「延滞料」などの名目で金員を支払わせた。

(3) 被害者に対する行為

Xらは、「アクセス」「友&愛」という2つの屋号を用いて、被害者V₁に貸付けを行った後、返済が滞ったV₁に対し、延滞料を支払わせ、「おばはん、なぜ翌日すぐに延滞料を支払わんのか」等と述べ、「すぐ迷惑料5万円を支払わんと近所の住民をガタガタにするぞ。」等と脅して恐喝した。

V₁は、耐えかねて地元の警察署に相談した。警察官は、この相談を受け、被告の闇金組織に電話して「これだけ払ったのだから、もうこれ以上金を取らなくてもいいだろう?」と警告した。

実行班担当者は、V₁が警察に相談したことを怒り、「なぜ警察に行った?金を返せ。振り込まんとどうなっても知らんぞ。絶対に完済させんからな。」と脅し、更にV₁に金員の振込みをさせた。

V₁はその後、被告らに電話をし、「もう払えません。完済にして下さい。許して下さい。」と頼んだ。これに対し、被告担当者は「絶対完済させないと言うたやろ。団地中に電話して、V₁が金返さんから代わって払えと電話しまくるぞ。払えないなら死んでみろ。」と脅し、更に振込みをさせた。

その後、ほどなくして、V₁は他の2人と共に自殺した。

判決文の要旨

被告ヤミ金融組織が被害者に交付した金員は、その貸付自体が金員喝取(恐喝してお金を取ること)の口実にすぎず、公序良俗違反で無効である(民法708条)。したがって、ヤミ金融組織側は、被害者に対して、その返還を求めることはできない。

被告らが債権回収に名を借りて行った過酷な取立ては、恐喝行為にあたり(刑法249条1項)、同行為と債務者の自殺との間には相当因果関係がある。

被告らは、原告(被害者の相続人)2名に対し、金4900万円(概算)と遅延利息を支払え。

まとめ -裁判例からの教訓-

この事件は、闇金犯罪の悪質さ、被害の凄惨さを教えてくれる事件であり、悲劇でもあります。被害者の方の御冥福を心から祈るばかりです。

しかし、この事件は私たちに大きな教訓を残しています。それは主に次の2点です。

(1) 警察への相談が、実効的解決にならなかったこと

被害者は、死を決意する前に警察署に相談に赴いています。しかし、闇金担当者を怒らせただけで、取立てをストップさせることはできませんでした。

なぜでしょうか。警察には「民事不介入」の建前があり、刑事の事件性がなければ警察力行使はできないのが原則だからです。そして闇金側は、そのことを知っています。この時の警察官は、闇金に警告をしています。もっとも警察官が、このような警告をすることはあまりなく、「民事不介入ですから」と言って、取り合わないケースも多いようです。当該の警察官も、あくまで以後の刑事犯罪予防のため、やんわりと警告するにとどめたのでしょう。

この時、もし被害者の方が、司法書士や弁護士等の法律専門家に相談し、苛烈な取立てをストップさせることができていたら、と思います。

(2) 返す必要のないお金であったこと

被害者の方は、苛烈な取立てに抗することができずに、このような結末を選んでしまいました。しかし、被害者の方が、もし、このお金が、そもそも返す必要などないことを知っておられたら、このような悲劇も起こらなかったのではないでしょうか。

裁判所も述べている通り、闇金が交付したお金は貸金でもなく、金融でもありません。被害者の金銭をむしり取るための手段、口実のために交付された違法なお金です。

このような、違法なお金の取立てをストップさせるため、最も有効な方法は、「法律」の力を借りることです。

もし、皆様の中に、「闇金との縁を切りたい」「切りたいが、切ることができない」とお悩みの方がおられましたら、是非法律の専門家である当事務所にご相談ください。

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