裁判例でみる闇金事件簿その3-被害者が犯した強盗殺人-

公開日:2018/08/03更新日:2018/08/08

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裁判所

相談員の石川です。

今回は,闇金側ではなく闇金被害者が起こしてしまった事件についてご紹介します。

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事件の概要等

事件名

強盗殺人被告事件

事件番号

鹿児島地方裁判所 平成25年(わ)第277号

判決日時

平成26年5月22日

事件の概要

ヤミ金融業者への返済資金入手のため知人を殺害して現金を強取しようとして,殺意をもって,持参したハンマーで同人の後頭部などを多数回殴って現金を強取し,さらに台所にあった包丁で同人の首などを複数回突き刺して失血死させた事案。

判決

※一部要約しています。

主文

被告人を無期懲役に処する。
未決勾留日数中100日をその刑に算入する。
鹿児島地方検察庁で保管中の包丁1本及びハンマー1本を没収する。

理由

犯罪事実

被告人は,いわゆるヤミ金業者からの執拗な取立てを受け,その返済資金を手に入れなければならないとの思いから,知人であるV(当時61歳)を殺害して現金を強取しようと考え,平成25年7月4日午後0時55分頃から午後1時15分頃までの間,鹿児島県姶良市V方において,殺意をもって,持参した金属製ハンマーで,同人の後頭部などを多数回殴り,その反抗を抑圧した上,同人所有の現金約9万2000円を強取し,さらに,同人方台所にあった包丁(刃体の長さ約12.1センチメートル)で同人の首などを複数回突き刺し,よって,その頃,同所において,同人を頚部刺創に基づく失血により死亡させて殺害した。

量刑の理由

被告人は,犯行直前に被害者に申し込んだ借金を断られたことで,顔見知りの被害者から金を奪うには被害者を殺すしかないと考え,金属製ハンマーで被害者の後頭部や顔面付近を少なくとも8回殴り,さらに現金物色中に被害者の声が聞こえたことから,包丁で被害者の首付近を少なくとも5回刺している。

金属製ハンマーでの攻撃は,後頭部を陥没骨折させ,それ自体十分死に至るだけの傷害を負わせるものであったし,包丁での攻撃は,右総頚動脈を切断してほぼ首を貫通させるものであった。

したがって,被告人の行為は,非常に執拗で危険なものであった。

被告人が冷静沈着にそのような攻撃をしたとは認められないものの,被害者の頭や首を狙ってそのような攻撃をしているから,興奮や動揺があったとしても,その危険性をわかった上で,自らの殺害目的を遂げたと評価できる。

被告人は,本件犯行当時,いわゆるヤミ金業者からの執拗な取立てにより精神的に追い詰められ,必ず返済しなければならないとの心理状態に陥っていたことが認められ,そうであったからこそ,本件犯行に及んだものと認められる。

しかし,そのような状況でも,妻に相談するなど他に取り得る選択肢はあったし,何より,返済資金を用意できなかったのであれば,ヤミ金業者に怯えながらも返済を諦めるのが通常であり,強盗殺人をしてでも現金を手にしようとすることは,人を殺すことへの強い抵抗感から決してしないはずである。

しかるに,被告人は,離婚をおそれて妻に相談せず,ヤミ金業者から受けるかもしれない不利益から逃れるため,他人の命を犠牲にする強盗殺人を自ら決断し,実行している。本件犯行には,ヤミ金業者からの執拗な取立てにより生じた心理状態よりも,被告人自身の自分本位な性格や判断が大きく影響しているというべきである。

したがって,上記のとおり悪質な強盗殺人に及んだ被告人には,依然として厳しい責任非難を向けるべきである。

そうすると,本件は,弁護人が主張するように更生可能性を考慮して酌量減軽をすることができるような事案ではなく,被害者1名に対する強盗殺人の事案として,その犯罪の性質に相応する刑罰を科すべきであるから,無期懲役に処すのが相当と判断した。

まとめ-裁判例からの教訓-

今回は闇金業者の起こした事件ではなく闇金被害者が加害者側となってしまった事件をご紹介しました。

本件は強盗殺人という極めて重大な事件でありそうそう起こるものではありませんが,闇金被害者の方が返済に窮したことにより窃盗,詐欺,横領といった犯罪を犯してしまうケースは頻繁に目にします。

そして,恐らく事件を起こしてしまった方々に共通するのは,闇金のことを身内や第三者に相談できなかったという点です。

本件でも判決理由中で述べられているとおり,妻に相談する等により犯行を断念する道がきっとあったはずです。

闇金問題は適切な対処をすれば必ず解決できますが,犯罪を犯してしまっては取り返しがつきません。

闇金のことで人生を棒に振ることがないよう,本当に困ったらまずは誰かに相談するということを検討してください。

なお,当事務所では匿名での相談も可能です。

誰かに相談するだけでも多少は気が晴れますから身近な人に相談できない方はぜひ,しもひがし法務司法書士事務所の無料相談をご利用ください。

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