養育費を払えなくなり、公安委員会の番号がある先払い買取現金化業者に連絡
高知県在住のAさんは金型工場に勤務する40代の男性です。3年前に消費者金融からの借り入れが返済できなくなり、地元の弁護士さんに依頼して自己破産をされていました。
借金の整理はできたものの、その後奥様とは離婚。お子様の親権は奥様が持つことになり、毎月12万円を養育費として送金されていたそうです。
自己破産の苦い経験から毎日家計簿をつけて無駄な出費を抑えていたAさんは、養育費の送金が負担ではあったものの手取り30万円の給料で何とかやりくりできている状態でした。
しかし、そんな比較的安定した毎日も長くは続きませんでした。最近の円安で工場の受注が減少し、毎月30時間ほどあった残業がほとんどなくなってしまったからです。
残業代を当てにしていたAさんは、それでも何とかやりくりしていましたが、しだいに養育費の送金に頭を悩ませるようになっていきました。家計が厳しくなったAさんは当初、銀行のカードローンを利用して不足分を補おうとしましたが、自己破産からまだ3年しか経っておらず信用情報機関に事故情報が登録されているため、審査が通りません。
そんな折、ネットで見つけたのが先払い買取現金化業者のウェブサイトでした。ギフトカードの画像をLINEで送るだけで必要なお金の送金が受けられるという言葉にAさんは魅力を感じました。
「ここを利用して大丈夫だろうか」との不安もあったそうですが、ホームページに公安委員会の許可番号というものが掲載されていたことから「違法業者ではないだろう」と申し込みをしてしまったそうです。
先払い買取現金化業者の支払いは膨らみ、取り立てが怖くなって司法書士に…
先払い買取現金化業者との契約は、商品券の画像をLINEで相手業者に送信し、その買い取り代金として1万円を振り込んでもらう代わりに1か月後に2万円分の商品券を郵送するか、それができない場合は違約金として2万円を支払うというものでした。
しかし、この契約は1万円を受け取って1か月後に2万円を支払うというものですから、お金の流れに着目すれば、30日で10割(年利1216%)を加算した利息を支払うことと変わりなく、出資法の上限金利(年利109.2%)を著しく上回る違法な貸付けです。
簡単な申し込みだけで先払い現金化業者から1万円を受け取ることができたAさんでしたが、実際には法外なお金の支払いを求められる状況に陥ってしまっていたのでした。
この先払い現金化業者と取引を開始したことでAさんの家計は以前より一層厳しくなっていたはずですが、審査もなく送金してくれることに魅力を感じたAさんはこの先払い現金化業者をたびたび利用するようになっていました。そして数か月が経過したころには、別の二つの先払い現金化業者を含めて合計3つの業者と取引を繰り返すようになってしまっていたのです。
もちろん、そうなってしまうと最早毎月の給料でやりくりできるものではありません。当然ながら業者への支払いは次第に滞るようになってしまいます。
支払いが滞れば業者側も黙って見逃してくれるわけがありませんから、少しでも支払いが遅れると「お前払わないってことでいいんだな」などのメッセージがLINEで入るようになりました。
怖くなったAさんは、専門家に依頼しないと解決できないのではないかと考えるようになり、当事務所にご連絡をくださいました。
「古物商」を称する先払い現金化業者に司法書士の介入を通知し、無事解決
こうしてAさんは、当司法書士事務所に3件の先払い現金化業者についてその対応を依頼されました。
当司法書士事務所では取引について詳細な聞き取りを行ったうえで、3つの先払い現金化業者に司法書士の介入を通知し、Aさんとの取引が売買契約を仮装した違法な金銭消費貸借であり無効であるとの立場で交渉を開始しました。
もっとも、一部の業者には抵抗する姿勢も若干見られましたが、結果的には3件とも金銭の支払いをすることなく無事解決となっています。
Aさんは勤務先やご実家への取立てなどをご心配されていましたが、そうした請求や嫌がらせ等もなく、比較的穏便に解決できた案件だったと言って良いのではないでしょうか。
Aさんには、今回の被害を教訓に給料の範囲で家計をやりくりし、養育費のお支払いを頑張っていただくことを切に願います。
先払い現金化業者は表向きはチケット等の買い取り業を装っていますが、金銭のやり取りに着目すれば、それはこの事例のように出資法の上限金利(109.5%※出資法第5条)を大きく上回る貸付けであって、暴利をむさぼる闇金(ヤミ金)と何ら変わらない違法業者です。
先払い買取現金化業者については、「古物商(公安委員会)の許可番号をホームページに掲載しているから正規の業者だろう」と考えて取引を始めてしまう人が少なくありません。
しかし、古物商の許可があったとしても、その業者が違法業者ではないとはいえません。
古物商の許可があるか否かにかかわらず、貸金業の登録をせずに貸金業を営んだり、出資法の上限金利を超える貸付を行う業者は闇金なのです。
そうした違法業者と取引を始めても法外なお金を搾り取られるだけで何一ついいことはありません。
絶対に利用しないでいただきたいと思います。
なお、「公安委員会」の許可番号はいわゆる古物商を営むために必要となるもので、貸金業の登録番号とは異なります。
貸金業の登録番号は、たとえば都道府県で貸金業登録を受けた場合は「○○県知事(1)第00001号」など、地方財務局で貸金業登録を受けた場合は「○○地方財務局長(2)第00002号」などと表記されます(カッコ内は登録の更新回数です)。
貸金業の登録番号と公安委員会の古物商許可番号とでは、表記自体も異なりますので混同しないように注意してください。
ところで、この記事でご紹介したAさんのように、自己破産や個人再生をご経験の方であっても手続きが終了しているご状況であれば当司法書士事務所でご相談を受けることが可能です。
過去に自己破産や個人再生、あるいは任意整理を他の弁護士や司法書士事務所に依頼していた方であっても、先払い・後払い現金化業者や闇金被害でお困りの場合は、お気軽にご相談いただければと思います。