司法書士の下東です。
個人向けのヤミ金が自宅まで取立てに来ることはそう多くありません。
顔を晒すということは,警察に逮捕されるリスクも飛躍的に高まるわけですから,個人に貸す少額のお金の回収のためにわざわざリスクを侵してまで来ないということです。
しかし,事業資金の融資となると話は違ってきます。事業者に対する融資は,数十万円以上とそれなりに高額になるため,対面で債務者を確認した上で融資を実行するヤミ金が多いのです。
直接会って融資や回収を行うのでそれなりにリスクを負うわけですが,融資額が大きいということはリターンも大きいためヤミ金側としてもやるメリットがありますね。
その他,個人向けと事業者向け違いは次のようなものです。
- 金利が300%~1200%程度と比較的低い
- 多くの書類を作成させる
- 暴力的・恫喝的な取立ては原則しない
- 取引先の情報を求められる
事業者向けのヤミ金は,暴力的・恫喝的な取立てや嫌がらせは基本しません。
そんなものよりも取得した書類や取引先の情報がこの手のヤミ金の武器なのです。
返済を滞らせると,取引先に連絡をするとか,売掛債権譲渡通知を送るなどと言い,暗に脅しをかけて回収を図るということです。
特に,下請けや孫請けの様な業態で事業を行っている企業においては,ヤミ金問題で信用を毀損し,元請けに切られてしまっては存続が危うくなることが明らかですから,このような脅しは効果てきめんでしょう。
さて,このようなヤミ金とは関わらないで頂きたいですが,既に関わってしまっている場合の対策について触れておきましょう。
それは,取引関係を疎明する資料を少しでも多く揃えておくことです。
対面で取引をするヤミ金は,逮捕されるリスクを低減するためか,極力証拠を残さないよう努めます。
事業者には多数の書類の作成・交付を求めておきながら,その控えは一切渡さないのです。
また,当然ながら返済時にも領収書は発行しません。
よって,何もしなければ資料は一切残りません。
ではどうすべきかというと,出来る限り詳細な記録をつけておくことです。
借入時は,いつ(年月日時分まで),どこで,何の使途のために,誰から(担当者名),いくらの借入れ(受領金額と名目上の契約金額)をし,そのためにどのような書面を各何通作成・交付したかを記録してください。また,融資勧誘がFAXで行われたのであればそれも保存しておきましょう。
返済時は,いつ(年月日時分まで),どこで,誰に対し(担当者名),どのような方法(現金払いか振込か)で,いくらの返済(実際に支払った額と名目上の返済額)をしたかを記録してください。更に,担当者の持ち物やつけている装飾品などにも注意を払い,ブランド名や特徴などを控えてください。仲良くなれば担当者が利用している電車の路線名くらいは漏らすことがあるのでそれも記録します。
また,借入時から返済時を通じて可能であれば会話は全て録音してください。
今はICレコーダーが安価で購入できますし,スマートフォン等でも録音出来るでしょうから,これは比較的容易に実行できるでしょう。
また,ヤミ金担当者の写真撮影・動画撮影も行ってください。ヤミ金が自動車で回収に来ている場合は,車両を撮影し,車種・ナンバーを控えてください。
録音に比べ難易度が高いですが,例えば,自社の敷地内・事務所内・店舗内のことであれば不可能でないでしょう。
このようにして多くの資料を揃えておけば,ヤミ金との交渉が容易になります。
警察に相談するにしても専門家に相談するにしても資料があるのとないのでは大きな違いがあります。
ヤミ金と既に関わってしまっているのだとしたら,せめて将来のリスクヘッジのために取引の詳細な記録を取ることを勧めます。