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携帯電話の本人確認厳格化の重要ポイントを解説—闇金対策への効果にも期待大

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投稿日:2025.09.15

最新更新日:2025.09.16

ニュース・報道

携帯電話の本人確認厳格化の重要ポイントを解説—闇金対策への効果にも期待大

携帯電話の本人確認厳格化の重要ポイントを解説—闇金対策への効果にも期待大

今月8日、総務省が携帯電話契約時の本人確認を厳格化する方針を固めたことが報じられました。
2025年上半期は特殊詐欺の認知件数が13000件余り、被害総額が597億円余りに上り、昨年と比較して著しく増加しています。特にオレオレ詐欺の増加がみられ、そのツールとしては電話が約79%、ショートメール・SNS・Eメールが12%を占めています(警察庁広報資料より)。
携帯電話が特殊詐欺の非常に重要な道具であることと著しい被害の増加を受け、年内にも法令の改正手続きに着手することとされています。

携帯電話契約の本人確認 厳格化へ

携帯電話契約の本人確認を厳格化 総務省、特殊詐欺への悪用多発

総務省は8日、携帯電話契約時の本人確認を厳格化するよう通信事業者に義務付ける方針を固めた。携帯電話を不正に入手して特殊詐欺などの犯罪に悪用するケースが多発していることを受けた措置。年内にも携帯電話不正利用防止法の関連省令の改正手続きに入る方向だ。(以下略)

※共同通信 2025/9/8(月) 18:31配信(Yahoo!ニュースより)

10日、「ICT サービスの利用を巡る諸問題に対する利用環境整備に関する報告書」が公表され、その具体的な内容が示されています。
そこでニュース記事内にある「携帯電話不正利用防止法」に関して、まずはどのような法律なのか、現在どのような点に問題があるのかを紹介した上で、本記事の本人確認厳格化の概要や今後の展望を説明します。さらには、携帯電話の本人確認厳格化が闇金問題に及ぼす影響についても解説します。

携帯電話不正利用防止法について

まずこの記事で取り上げられているのは、携帯電話不正利用防止法に関係する省令の改正です。

携帯電話不正利用防止法(正確には「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」)は、携帯電話の不正利用を防止するために、通信事業者が行うべき携帯電話を契約する際の本人確認に関する決まりを設けています(携帯電話不正利用防止法1条)。

携帯電話不正利用防止法1条〔目的〕
 この法律は、携帯音声通信事業者による携帯音声通信役務の提供を内容とする契約の締結時等における本人確認に関する措置、通話可能端末設備等の譲渡等に関する措置等を定めることにより、携帯音声通信事業者による契約者の管理体制の整備の促進及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止を図ることを目的とする。

いわゆるトバシ携帯と呼ばれるような、不正に入手した他人名義の携帯電話が特殊詐欺や闇金などの犯罪において非常に重要なツールになっていることにかんがみると、なりすましによる契約や、違法業者への譲渡などを防止する措置を講じることが不可欠といえます。

そのために契約時の本人確認や端末の譲渡にあたって、通信事業者が執るべき様々な措置がこの法律で定められています。

現在の本人確認の問題点

後ほど今回の本人確認厳格化の内容について重要な点を3つ取り上げますが、これに関係する部分について、現在の規制はどうなっているのかをまず説明します。

まず、携帯電話を契約する際の本人確認義務は携帯電話不正利用防止法3条に基づいています。

携帯電話不正利用防止法3条〔契約締結時の本人確認義務等〕
1項 携帯音声通信事業者は、携帯音声通信役務の提供を受けようとする者との間で、役務提供契約を締結するに際しては、運転免許証の提示を受ける方法その他の総務省令で定める方法により、当該役務提供契約を締結しようとする相手方(以下この条及び第十一条第一号において「相手方」という。)について、次の各号に掲げる相手方の区分に応じそれぞれ当該各号に定める事項(以下「本人特定事項」という。)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。
一 自然人 氏名、住居及び生年月日
二 (略)

携帯電話を契約する際は、「運転免許証の提示を受ける方法その他の総務省令で定める方法」でその者の氏名、住居、生年月日を確認しなければなりません(携帯電話不正利用防止法3条1項)。
身分証の人物と、契約しようとする人物が同一であるかを確認するためにいくつかの方法が掲げられていて、対面によるか非対面によるか(店頭か、オンライン・郵送か)、使用しようとする身分証が他人による発行も可能であるか否か、顔写真付きで容貌の確認も可能な身分証であるか、などによって方法が細かく定められています。
これは総務省令である
携帯電話不正利用防止法施行規則に規定があります。

対面では運転免許証などの提示のみ

ショップの店頭にて対面で契約する場合には、運転免許証や保険証などの身分証を提示し、氏名、住所、生年月日を確認することによって本人確認を行うことができます(携帯電話不正利用防止法施行規則3条1項)。
また、官公庁から発行される顔写真付きの書類等(同規則5条1項1号ホ)を用いることも可能になっています。もっとも住民票の写しや顔写真が無いものについては書留郵便等を併せて用いる必要があります(同号ニ、へ)。

非対面での契約の場合は、運転免許証などのコピーを送ることに加えて、住所地に書留郵便で端末や書面を送るなど、居住実態の確認も行われます。
しかし、対面での契約はその場で顔写真付きの身分証を提示すればよく、偽造運転免許証によって契約する事件が一定数発生していました。身分証偽造の技術も極めて巧妙なものになっている現在、この方法だけでは成り済ましのリスクが大きいことが問題となっています。

2回線目以降はIDとパスワードだけ

次に、すでに契約している人が、追加で回線を契約する場合の本人確認方法について、みてみましょう。
2回線目以降の契約をする際は先ほどと異なり、簡略化されています。

携帯電話不正利用防止法施行規則3条
3項 携帯音声通信事業者は、既に役務提供契約を締結している者と新たに役務提供契約を締結する場合は、第一項の規定にかかわらず、当該相手方について、本人確認記録等に記録されている者と当該相手方が同一であることを確認することにより、本人確認を行うことができる。

4項 前項の確認の方法は、相手方から役務提供契約の締結の際に示された本人特定事項を、当該相手方の既に締結した役務提供契約に係る本人確認記録等及び料金の請求その他携帯音声通信役務の提供に必要な事項に係る文書の送付先(既に役務提供契約を締結している者の住居又は本店若しくは主たる事務所の所在地である場合に限る。)と照合する方法とする。

追加で回線を契約しようとする人が既に契約をしている人と同一人物であることを、ID・パスワードなどの本人しか知り得ない事項にて確認を行います(携帯電話不正利用防止法施行規則3条3項)。
それに加えて、過去の本人確認記録や料金請求書等の送付先と“照合することにより、本人確認を行うことができます(同4項)。この際、郵便物を実際に“送付して確認する必要はなく、送付先が同じであることを確認するだけでよいことになっています(これは、その送付先の情報が事業者によって継続的に更新されていることが期待できるためとされています。

➤携帯電話の犯罪利用の防止 Q&A-携帯音声通信事業者向け-7-2参照(総務省ウェブサイトより)

最初に契約する際には身分証の提示などが要求されますが、追加での回線契約はID・パスワードの確認だけの非常に簡易な方法でできるようになっているのです。

データ通信専用SIMは対象外

SIMカードには、通常の音声通信が可能なもの以外に、データ通信専用のものが存在します。これは通話することができませんが、ショートメール(SMS)でメッセージを送信することが可能になっています。
ところで、携帯電話不正利用防止法の正式な名称は「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律」という長い名称になっています。ここで注目すべきは、携帯”音声”通信となっている点です。

携帯電話不正利用防止法2条1項
 この法律において「携帯音声通信」とは、携帯して使用するために開設する無線局(第四項において「無線局」という。)と、当該無線局と通信を行うために陸上に開設する移動しない無線局との間で行われる無線通信のうち音声その他の音響を送り、伝え、又は受けるものをいう。

すなわち、音声による通話ができないデータ通信専用SIMは、この法律の対象外となっています。
一部の事業者は自主的に通話可能なSIM同様の本人確認手続きを設けていますが、法的にはその必要なく契約できる状態になっています。
➤参考:契約時の本人確認について(電気通信事業者協会ウェブサイトより)

以上の3点について、現在社会問題となっている闇バイトや特殊詐欺への対策として、今回見直しが検討される運びになりました。これらの場合の本人確認に関して、どのように厳格化が検討されているのかを次に見てみましょう。

本人確認厳格化の3つの重要ポイント

携帯電話不正利用防止法の運用に関しては、総務省と警察庁が関連事務を取り扱っています。そして、電気通信事業を所管する総務省から9/10に報告書が公表され、携帯電話の契約に関する不正防止に対する対策が盛り込まれました。
「ICT サービスの利用を巡る諸問題に対する利用環境整備に関する報告書」(総務省ウェブサイト)にて、ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会による各種の提言が行われていますが、今後の特に注目したいポイントとして本記事では以下の3つを取り上げます。

①店頭での契約においても、身分証の提示だけでなくマイナンバーカードのICチップ読み取りなど確認を厳格化
②追加で回線を契約する際に認められていたIDとパスワードのみによる本人確認を禁止
③データ通信専用回線のSIMカードの契約においても本人確認を義務化することを検討

 

今回の本人確認厳格化の具体的な内容のうち、上記3点に関して、その背景事情などを次にみてみましょう。

厳格化の背景や今後の展望

偽造身分証の横行と追加回線契約時の抜け穴

今年2月、中高生グループが約33億件の他人のIDとパスワードを入手し、生成AIを悪用し自作したプログラムで数千もの回線を不正に契約した事件が報じられました。
➤楽天モバイルへの不正ログイン容疑で中高生3人逮捕、他人のID・パスワード33億件購入か(読売新聞オンライン 2025/02/27 12:44配信)

こういった事案で、前掲②のような2回線目以降がID・パスワードのみで契約できる仕組みが悪用されています。
一旦本人確認を行って契約できると、後はそれに基づいて本人確認をパスし、多数の回線を作れることになります。

一方で、前述のように、店頭で偽造運転免許証を提示して携帯電話の契約を行うなど、初回契約時にも本人確認手続きをすり抜けるケースが問題になっていました。運転免許証の偽造技術が向上するにつれて、従来のようないわば人間の五感に頼った本人確認方法は容易に突破されることになり、対面での取引というこれまで最も確実と考えられていた本人確認方法が、逆に規制を容易にくぐり抜けられる方法になりつつあるのです。
もはや、現行の本人確認手続きを巧妙にすり抜ける犯罪スキームが確立してしまっているといえる深刻な状況です。

このように一度本人確認手続きをすり抜ければ、後はいくらでも不正に電話回線を入手できる状況であり、これは本人確認手続きを定めた携帯電話不正利用防止法などの法令が、最新のAIを駆使したプログラムや運転免許証偽造技術に対応しきれていないという厳しい現実をつきつけるものであるといえます。

SNSの犯罪利用を踏まえたデータSIM規制の必要性

③のデータSIMの論点に関しては、ショートメール専用回線を用いることで各種SNSアカウントの取得が可能であることが背景になっています。
データ通信専用回線は前述のとおり現行の携帯電話不正利用防止法における本人確認義務の対象となっていませんが、近年頻繁に報じられている
SNS型投資・ロマンス詐欺でのSNS使用率の高さに鑑みると、もはや対策は急務と言える状況でした。
➤参考:令和7年7月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)〔警察庁ウェブサイト

また、当サイトの闇金リストをご覧いただくと分かりますが、現在活動する大半の闇金業者がLINEなどのSNSアカウントを所有していて、電話番号などを明かさずに大量のアカウントを作成して大規模な営業活動を行っています。
すなわち、SNSは従来の携帯電話番号に代わる最も重要な犯罪ツールの一つであるため、それが本人確認を経ず事実上無制限に調達可能となっているのは非常に危うい状況と言えます。
これはある意味では、携帯電話不正利用防止法において当初想定されていなかった状況が瞬く間に現れ、対策が現状に遅れをとってしまった結果であるとみることができます。
こうした実態からみると、データSIMについても音声SIM同様に厳格な本人確認を要求する必要があるということを念頭に規制を設けるべきと言えるでしょう。

マイナカードICによる本人確認に期待

前掲①及び②は、本人確認の厳格化において車の両輪となって機能する重要な改正になると思われます。
携帯電話契約以外においても、マイナンバーカードのIC情報は重要な本人確認ツールと位置付けられていて、今後これを用いた本人確認が標準化されることが見込まれます。

今年7月には、金融庁から、口座開設時の運転免許証による本人確認の早期廃止の要請が銀行業界に対して行われました(これについては7/29公開記事「口座開設時の運転免許証による本人確認を早期廃止へ 金融庁が要請」をご覧ください)。これは犯罪収益移転防止法の改正法施行を待たずに行われた要請であり、その緊急性の高さがうかがわれる出来事でした。

また、デジタル庁の行政サービスデジタル化の施策として、「犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法に基づく非対面の本人確認手法はマイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でも公的個人認証による本人確認を進めるなどし、本人確認書類のコピーは取らないこととする。」(デジタル庁『デジタル社会の実現に向けた重点計画』令和5年6月9日閣議決定 p.54)との方向性が示されています。

そして、複数回線を所有する場合にも各回線ごとに厳格な本人確認を要求することで、これまでのような、違法業者による電話回線の大量入手に待ったをかけることが期待できます。

闇金対策への効果にも期待

090金融だけでなくSNS闇金への影響も大

今回の本人確認厳格化が闇金業者に及ぼす影響も大きいと考えられます。
闇金が営業する上でも、成り済ましなどによって不正に入手した携帯電話が不可欠であり、LINEなどSNSアカウント作成のためにも必ずと言ってよいほどトバシ携帯が活躍します。かつて090金融と呼ばれていたように、闇金にトバシ携帯は不可欠とされていましたが、実はそれはLINEやSignal、テレグラムの闇金が多くなった現在でも変わりません。

またショートメールも頻繁に用いていて、融資の勧誘を始め、取立ての際の嫌がらせや脅迫メッセージの送信に至るまで携帯電話番号を用いる業者が今も多数存在します。データ通信専用SIMを用いてこうしたメッセージを送信するケースはとても多く、これほど重要なツールを本人確認もなく入手できる状態は明らかに問題といえます。

本人確認厳格化を闇金撲滅のチャンスに

ところで闇金は自社で他人名義の携帯電話を入手することもありますが、違法業者向けの携帯販売業者やレンタル携帯業者から購入・リースで調達していることもあります。成り済ましによる回線取得が難しくなると、闇金がトバシ携帯を入手するコストが大きくなることが予想できます。
これによってそもそも闇金は割に合わない犯罪としてその数が減少することが期待できますし、貴重な電話回線が利用停止されることを避けるため、あまり過酷な取立てや悪質な嫌がらせは控えようと考える業者も出てくることが予想できます。

いずれにせよ、闇金にとって今回の携帯電話契約時の本人確認厳格化は大きなダメージになるでしょうし、預金口座開設時の本人確認の厳格化も合わせると、重要なツールを根こそぎ奪うことで闇金を撲滅してしまうチャンスにもなると言えるでしょう。

金融犯罪対策における今後の課題

かねてより、顧客名簿、預金口座、トバシ携帯は、闇金や振り込め詐欺など金融犯罪の三種の神器と呼ばれる重要なツールでした。
特に、お金の決済を行う預金口座と、勧誘や指示などやりとりを行うトバシ携帯は不可欠ともいえるもので、これは電子決済システムやSNS、通信アプリが普及した今でもほとんど変わっていません。
法整備が現状に追いついていないという問題はあらゆる分野で指摘されることですが、組織的な金融犯罪においてこの問題は顕著で、且つ極めて切迫した状況下にあることは、昨今の闇バイトやトクリュウに関する連日の報道でも実感するところです。
できる限り迅速に現行制度の見直しや法改正が可能になる手続きの仕組みや、今後起こり得る事態にも柔軟に対応できるような制度設計をどのように構築してゆくかが重要な課題といえます。
犯罪組織は日々進歩を続けていて、AIなど最新技術を利用した非常に巧妙かつ大規模な犯罪を行い、多くの被害者を生み出しています。その実態解明もより困難になっていることから、対策を講じるまでに一定の時間を要し、広く一般にアナウンスされる頃にはすでに極めて多くの被害者が発生しているということが往々にして生じる傾向にあります。
法令による規制を設けるにあたっては、監督官庁に一定の要件裁量を持たせることで問題への法的対処が機動的に行えるよう制度設計を行うことや、官庁だけでなく業界団体が設けたルールによって業界内部からの自主的な統制が図られるような枠組みを構築することも有用であると言えるでしょう。
技術の進歩や社会情勢の変化を見据えた、実効性のある対策が講じられることが期待されます。