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警察庁が口座売買の厳罰化を検討—闇金への口座譲渡にも大きな影響が
|闇金情報ブログ投稿日:2025.09.22
最新更新日:2025.09.22
ニュース・報道
警察庁が口座売買の厳罰化を検討—闇金への口座譲渡にも大きな影響が
目次
警察庁が口座売買の厳罰化の検討を開始

警察庁がマネーロンダリング対策の一つとして、銀行口座の売買を厳罰化することを検討しているという報道がありました。
SNSを利用した闇バイトや、警察官をかたる振り込め詐欺、いわゆるトクリュウによる闇金被害など、今年に入ってからも金融犯罪に関するニュースが連日のように報じられています。これらの犯罪には必ずといっていいほど不正に入手した他人名義の口座が利用されている実態があります。
そういった背景から、不正な口座譲渡を取り締まる犯罪収益移転防止法(略して犯収法といいます)を改正し刑罰を重くすることや、自身の口座を経由させることでマネーリンダリングを行うことについての規制を設けることが検討されています。
銀行口座売買の厳罰化検討開始 警察庁 マネーロンダリング対策
「口座を高値で買い取ります」などと銀行口座の売買を呼びかけるSNSの投稿に応じて、犯罪に加担する人があとを絶ちません。売買された口座は、マネーロンダリングに使われているとみられ、警察庁は厳罰化に向けた検討を始めました。(中略)
会議は年内に数回、開かれる予定で、来年1月ごろに提言を取りまとめたいとしています。また、いわゆる「闇バイト」で、自分の口座に振り込まれた特殊詐欺の被害金などを犯罪グループに指示された口座に移す、新たな手口も目立ってきているとして、警察庁は規制のあり方などを検討することにしています。
※NHK NEWS WEB 2025年9月18日 19時45分配信より一部引用
口座売買は現在どんな罪に問われる?

現在犯罪収益移転防止法28条では、口座の売買を行うと、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方が科せられることになっています(同3項は3年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金)。条文は以下のとおりです。
犯罪収益移転防止法28条
▪1項 他人になりすまして特定事業者(第二条第二項第一号から第十五号まで及び第三十七号に掲げる特定事業者に限る。以下この条において同じ。)との間における預貯金契約(別表第二条第二項第一号から第三十八号までに掲げる者の項の下欄に規定する預貯金契約をいう。以下この項において同じ。)に係る役務の提供を受けること又はこれを第三者にさせることを目的として、当該預貯金契約に係る預貯金通帳、預貯金の引出用のカード、預貯金の引出し又は振込みに必要な情報その他特定事業者との間における預貯金契約に係る役務の提供を受けるために必要なものとして政令で定めるもの(以下この条において「預貯金通帳等」という。)を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り受け、その交付を受け、又はその提供を受けた者も、同様とする。
▪2項 相手方に前項前段の目的があることの情を知って、その者に預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同項と同様とする。通常の商取引又は金融取引として行われるものであることその他の正当な理由がないのに、有償で、預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、又は提供した者も、同様とする。
▪3項 業として前二項の罪に当たる行為をした者は、三年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
▪4項 第一項又は第二項の罪に当たる行為をするよう、人を勧誘し、又は広告その他これに類似する方法により人を誘引した者も、第一項と同様とする。
上記のうちの1項が、預貯金通帳等を他人より譲り受けたり買い取ったりした者を対象とした規定で、主に不正に口座を入手した特殊詐欺業者や闇金業者などを取り締まるものになっています。
そして2項が他人に渡したり売った者を対象とした規定で、主に自分の口座を詐欺業者や闇金に渡した人を取り締まるものになっています。こちらは銀行で口座を開設する一般人が当てはまる場合が多く、例えば闇金から借りている人が返済できなくなり、その替わりに、所有している預金口座を闇金に渡すといったケースがあります。
この条文についての詳細は、🔗ヤミ金への口座売買・譲渡は何罪で逮捕される?Part.2―犯罪収益移転防止法の概要をご参照下さい。
まだ具体的な検討の中身は公表されていませんが、今回この犯罪行為についての厳罰化が検討されるということで、その内容がとても注目されます。
当事務所では闇金被害の相談に関連してこういった事案のお話を伺うことがよくありますが、その中で確かに刑罰の重さに関してバランスがとれていないと言える場面があります。例えば以下のようなケースです。
なぜ厳罰化が必要か?現在の問題点

現在の罰則での問題点
先ほどの犯収法28条2項に違反するのは、すでに開設している預金口座を違法業者に渡すというケースです。
一方、新たに口座を作ってから違法業者に渡すというケースもよくありますが、この場合は犯収法違反に加えて金融機関に対する詐欺罪が成立します。
口座譲渡に関する詐欺罪の詳細については、🔗ヤミ金への口座売買・譲渡は何罪で逮捕される?Part.1―詐欺罪の概要と逮捕リスクをご覧ください。
詐欺罪は刑法に規定があり、10年以下の拘禁刑に処せられます(刑法246条1項)。
▪刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
犯収法違反と詐欺罪の両方の罪に問われたとき、すでに持っている口座を渡したのみのときに比べて刑罰が非常に重くなる可能性があります。
具体的には、拘禁刑(旧来の懲役刑・禁錮刑)につき最高で11年以下(刑法47条)になる可能性があり、口座譲渡のみの場合の1年以下と比較して、新たに開設して譲渡すると著しく長期になってしまうという問題点があるのです。
法的には、金融機関をだまして口座を作るという新たな犯罪が加わるわけなので、刑が重くなるのは当然と言えます。しかしながら、すでに持っている口座を犯罪者に渡す場合と比べて、新たに開設してから犯罪者に渡す場合に何倍も罪が重くなる実質的な理由はあるのでしょうか。
もちろん情状酌量により、これらを考慮した上で刑期が決まることが多いでしょうが、新たに開設して譲渡した場合と、すでに持っている口座を譲渡した場合とで差があまりにも大きいと言わざるを得ません。
違法業者よりその被害者が重く処罰される!?
さらには、違法業者が業として口座の譲り受けを行う場合は最高で3年以下(犯収法28条3項)であるのに比べ、その業者に口座を渡した側が11年以下になってしまうのもバランスがとれません。
むしろ、闇金などの違法業者から半ば脅されたりだまされたりする形で口座を開設させられ、譲渡してしまうというケースも多く、あまりにも実態とは異なる理不尽な結果になってしまいます。
だまされたり脅されたりして口座を開設し譲渡させられた被害者がその加害者よりも重い罪に問われる可能性があるというのは明らかに理不尽といえます(もっとも、違法業者が摘発された場合は、複数人に対する詐欺罪など犯収法以外の刑も複数加わるでしょうから、より重くなることが多いでしょうが)。
現在の拘禁刑1年以下は軽すぎる
これは、詐欺罪が重すぎるというよりは、被害の実情からみて、犯収法28条の刑が軽すぎると考えるべきでしょう。
詐欺罪は極めて悪質で巨額に及ぶ詐欺事件も対象とするものである以上、最高刑を重くしておくのはやむを得ません。
一方で、口座の不正譲渡が1年以下というのは、実際に発生している被害の深刻さに比べてあまりに軽く、さほど大きな抑止力にもなっていないのではないかと懸念されます。
むしろ、不正な譲渡によって調達されたトバシ口座が、数千万、数億円規模の巨額詐欺被害や全国的な大規模の闇金被害を生み出している現実を踏まえると、この法律の厳罰化が行われるのは当然といえるでしょう。
また今後は上記のような、譲渡する側と譲渡を受ける側の立場の違いなど、現実的な側面を踏まえた改正も必要になってくるかもしれません。
闇金への口座譲渡はこれまで以上に厳禁!

もっとも、一般の人が違法業者に口座を譲渡させられるといったケースでこれまで以上に罪が重くなるリスクはあります。
情状酌量による刑の減軽があっても、これまでよりも厳しい判断になってしまう恐れがありますので、今後さらに注意が必要になります。現在でも絶対にやってはならない行為ですが、これまでに増して口座の譲渡は絶対に厳禁と認識しておくべきでしょう。
たとえ闇金などの違法業者に持ち掛けられてやってしまったことであっても、ご自身が罪に問われてしまい、それ相応の処罰を受けてしまうのが現実です。
それだけでなく、今後生涯にわたって銀行口座を持てなくなる、新たに口座の開設が出来なくなるなど、非常に大きな不利益を受ける危険性も大きいです。
闇金に口座を渡せと言われたらすぐ司法書士等に相談を

違法業者から口座の譲渡を持ちかけられている方は、口座を渡す前に速やかに警察などに相談されることをおすすめします。
特に闇金への返済に替えて口座を要求されているという場合において、司法書士や弁護士などの専門家が介入すると、依頼者は専門家から口座の譲渡は絶対に行わないよう指示を受けるはずですから、闇金も口座の入手は断念するのが普通です。
闇金からの請求や口座譲渡の要求をストップさせるためにも、速やかに司法書士などに相談するのがベストです。
前記のように、一度口座を渡してしまうと非常に大きなペナルティを受ける可能性があり、今後の生活にも甚大な影響を及ぼしてしまいます。
一刻も早く専門機関に相談し、犯罪に手を染めてしまう前に違法業者とは縁を切るようにして下さい。








