- ・闇金の言う緊急連絡先の意味
- ・どのように緊急連絡先を聞き出すのか?
- ・なぜ緊急連絡先を聞くのか?
- ・緊急連絡先を聞かれている場合の対策
相談員の横田です。
闇金は,貸付けを行う顧客に対して必ずと言っていいほど職場や家族の連絡先などを聞きます。
一般の(正規業種の)ローンやクレジットカードの契約でも,家族の情報を聞かれることがありますが,通常は保証人(連帯保証人)ということで要求されます。
融資がコゲつくと抵当に入っている不動産などを競売にかけて回収するのと同様に,借主が払えないと保証人の財産の中から回収を図るという制度です(前者は物的担保と呼ばれるのに対して,保証人は人的担保とも呼ばれます)。
闇金業者の場合は保証人不要とうたっているところが多いため,保証人ではなく緊急連絡先という名目で家族など他人の連絡先を要求してくることが多いです。
闇金のいう緊急連絡先は何を意味しているのでしょうか。
目次
どういう情報を聞かれるのか?
電話のみで営業する090金融から融資を受けるときに,借りる本人の住所と電話番号だけしか聞かれないということはほとんどありません。
必ずと言っていいほど勤務先の情報は聞かれますが,それ以外にはどういった情報を聞かれるのでしょうか。
聞かれることが多いのが,家族のうちで特に配偶者や両親の名前と電話番号です。
他にも,職場の上司や代表者,子どもの携帯や学校名も聞くところが多いです。
場合によっては家族の勤務先なども詳しく聞かれることがありますが,この場合は後述のとおり要注意なパターンとなります。
ここで具体例を挙げてご紹介します。
下の画像は,とあるソフト闇金の融資申込み時に送られてくるLINEの文面です。

「弊社必要書類です。
1 顔写真付身分証明書
2 ご本人様と身分証明書が一緒に写った写メ
3 保険証
4 公共料金
5 給与明細
6 緊急連絡先 親族の方のみ(名前,住所,固定電話,携帯電話,お勤め先,続柄)
7 御同居の方(お勤め先,携帯電話,続柄)
8 他社借入 短期闇金のみ(業者名,返済日,返済金額)
9 お住いの物件の連絡先(管理会社,大家,電話番号)
10 ご希望の金額,返済日
上記をラインにて返信下さい。
確認後,こちらからご連絡致します。」
緊急連絡先として親族や同居人の勤務先を要求しています。
また,自宅の管理会社や大家さんの連絡先も要求されています。
これらの情報はすべて取立て先を確保する目的で収集され,不都合が起こると全ての連絡先へ電話をされるおそれがあります。
自宅の管理会社や大家さんにまで電話をかけて,「本人と連絡がつかないから様子を見に行ってほしい」などと伝えて訪ねさせるというイタズラをされたという例も少なくありません。
どのようにして他人の連絡先を聞き出すのか?
緊急連絡先として家族や職場の同僚・上司,友人の情報を教えるということは,人によっては相手が違法業者でなくとも躊躇うことあるかと思いますが,闇金は上手くそれらの情報を聞き出します。
「審査のためだけに必要なので取引後は緊急連絡先に連絡することはまずない」と言われたり,「もしお客さんが急病や死亡などで連絡取れない場合に債権は放棄するとの連絡をご家族などへ入れないといけないから」と説明されたりします。
また,電話番号などは聞かれなくても,関係者の自宅や職場を名前や業種,地域などの漠然とした情報のみで特定できる場合には,そのための最低限の情報だけをさらっと聞かれることもあります。
なお,業者によっては,貸付可能な金額が緊急連絡先の数で変わることがあります。
特に,まだ収入の安定していない方がある程度まとまった金額の融資を受ける場合などは,20〜30人分の連絡先を要求されます。
また,一部の対面闇金業者では,お客さんのスマホを同期して,端末に入っているすべての連絡先データを抜き取られることもあります。
この時連絡先と同時に写真などのデータも抜き取られるため,もし他人に見られたくない画像などを持っていると,その画像を連絡先へ拡散される危険性があるのです。
LINEを使う闇金の中の一部業者は,融資の条件としてLINEの友だちを何十人分も送らせるところがあります。
この手の業者はそれと同時に顔写真や裸の写真を要求してくることが多いのですが,もし本人と連絡が取れなくなったりすると,それら友だちとのグループを勝手に作り,そのグループのトークルーム内に画像を張り付けて恥ずかしい写真をばら撒くという嫌がらせをします
全てのLINE闇金がそういうことをするわけではなく,今のところは一部の業者に限られますが,LINEのようにすぐに連絡先を交換できるようなツールを使っていると他人の連絡先を送ってしまうことにあまり抵抗を感じないかもしれません。
しかし,このような嫌がらせによる精神的なダメージは少なくありませんので,人によっては電話で脅迫されたり職場へ電話されて業務妨害されるなどの従来の嫌がらせよりも深刻なダメージになってしまうでしょう。
闇金は何のために緊急連絡先を聞くのか?
多くの業者が保証人不要とうたっていながら,闇金が他人の情報を聞くのは何のためなのでしょうか。
結論から言うと,闇金が緊急連絡先を聞くのは取立てのためです。
そして,より細かく見ていくとその目的は三パターンほどに分かれます。
目的①
まずは,本人に心理的な圧迫を加えるという目的です。
他人に闇金からの借入れのことを知られたくないという方について,関係者へ電話が入ると困るということで,それを避けるためになんとしてでも遅れがないようにしっかりと払わせることができます。
当初は緊急連絡先へ電話することはほとんどないと言われていたはずですが,もし返済が滞りそうになった場合,家族や職場の連絡先もこっちは知っているのだと度々言われるようになります。
例えばお金を扱う仕事や信用や個人情報保護が重視される仕事,上位の役職にある人などは,闇金との関わりが知られるだけで退職を余儀なくされるという事態もありえます。
そういう場合には,ことさら緊急連絡先への連絡を匂わせて脅してきます。
目的②
次に,緊急連絡先を一番の回収先とする目的が挙げられます。
これは,借りた本人がそもそも収入がないとか著しく低い場合などには必ずといっていいほど聞かれます。
例えば,専業主婦(主夫)や未成年者,学生などに貸すときは,配偶者や両親などです。
もしご本人がアルバイトなどをされている場合でも,バイト先では在籍確認がとれなかったからなどと理由をつけて家族の勤務先を要求してくることもあります。
闇金は,そもそも支払能力のない本人から回収しようという気はもともとなく,その人の家族の中で資力のある人から回収を図ろうとします。
収入のない方に比較的高額の貸付けをする闇金は,本人ではなく配偶者や親御さんの収入を基準に融資可能額を判断することが多いです。
本人と連絡がとれなくなった場合はただちにその家族へ取立ての電話が入ります。
目的③
三つ目は,SNSなどで恥ずかしい写真などを送りつける目的で要求するというものです。
これは最近の手口なのですが,貸付けの条件として,友だちのLINEアカウントを数人分送らせることがあります。
それに併せて,「借りたお金は必ず返します」などと手書きした紙を持った写メールを送らせたり,裸の写真を送らせます。
そしていざ返済が滞ると,SNSの友だちに一人ずつ恥ずかしい写真をばら撒き始めるという行動に出て心理的に圧迫を加えることで取立てをします。
どんな被害があるのか?
闇金からの借入れをばらされる
まず,自らの借金を誰にもばらされたくないという方の場合は,「職場や家族に電話をかけるぞ」と脅すだけでも(実際に電話をかけなくても)かなりの圧力になります。
闇金とは言わなくても,金融業者から借金をしているというだけでも内緒にしたいと思う方も多いでしょう。
したがって,特にこのようなお客さん向けに定型文のメールを用意している業者もかなりいて,闇金からすればコピペのメールを一通送信するだけで簡単に支払いを強いることができます。

実際に送られてきた脅迫メール
家族などを一番のターゲットにする
次に,上記目標②の実質的な取立て先として配偶者や両親のことを聞かれている場合は,当然そちらに取立てをされます。
この場合,借りた本人には早々に連絡が来なくなり,かわりに取立てのターゲットはより財力のある関係者の方へ完全にシフトするようになります。
家族の職場などにも連日激しい取立てをされ,自分にとってまったく関係のない会社や第三者をも巻き込んだ酷い取立て被害に発展してしまうことも多いです。
他人の電話番号のみでなく他人の勤務先も要求された場合は要注意です。本人の勤務先などよりもはるかに酷い嫌がらせを受けるリスクもあります。
SNSで友達に恥ずかしい写真を拡散される
そして3つ目の,LINEやFacebook,Instagramなどで友だちを送らされるパターンの場合は,いざ返済が滞ると,まずは「このままだとこの写真を友だち全員に送る」などと脅してくるところから始まります。
そして時間が経過するごとに実際にLINE友だちへ一人ずつ写真を送り始めるという行動に出ます。
恥ずかしい写真がより拡散する前に支払いを強要してくるのです。
この手の業者は人によっては数十人分のLINEを送らせますので,そのように少しずつ少しずつ圧迫を加えてくることがよくあります。
090金融の高圧的で過激な取立てとは違い,非常に陰湿で,闇金側にとっても手間のかからない取立ての手口です。
特に若年層にとっては,こういった嫌がらせは心理的にたいへん大きなダメージを与えられがちなので,最新の取立て手口としてはかなり悪質な部類に入るものといえます。
さきほど,闇金は保証人不要とうたっているので「保証人」としてではなく「緊急連絡先」として聞かれると言いましたが,その関係者へ取立てをしてくる際は必ずしもそうではなく,「保証人」という言葉を使ってくることがあります。
正規の貸金業者を装って両親などに電話をかけ「息子さんの弊社への返済が滞り,このままだと差押えなど法的措置になる。お母様が保証人になっているので,裁判沙汰になる前に何とかしていただきたい」などと言ってくることがよくあります。
当然闇金の貸付けなど無効であり,支払いに応じる必要は全くありませんが,急にこのような電話が来ると,事情を知らない関係者は焦って支払ってしまうことがあるでしょう。
なので,このように闇金に騙されてご家族が支払いをしてしまうことのないよう,しっかりと説明しておくべきです。
なお,保証の契約は書面を取り交わしていなければ成立しません。
勝手に連帯保証人にされてしまった人が煽りをうけて破産する例が問題になったため,保証人になる際はより慎重に判断させるべきだという趣旨から法律(民法446条2項)に定められました。
ですから,ご両親がそんな書面にはサインした心当たりはないということなら全く応じる必要はありません。
緊急連絡先を知られている場合の対策
闇金は,返済が遅れたりするとほとんどの業者が勤務先などへ取立てを行います。
残念ながら,そのような取立ての電話が100%連絡が来ないようにするということは物理的には困難です。
これは闇金がそもそも違法業者であるゆえに,取立てが法律で禁止される局面に至った場合でも,法を破って違法な取立てをすることもあり得るからです。
なかなか逮捕や検挙が難しいからこそ,多少のリスクは覚悟した上で凶行に出ることもあるということです。
しかし,緊急連絡先への被害を極力減らすための対策は考えられます。
どんな場合に闇金は請求を止めるのか
そんな闇金も,自らに対するリスクが高まるとそれ以上の取立てはやめておくほうが良いと判断するのが普通であり,いかに悪質な業者であってもリスクは常に意識しているのです。
また,現実的にそれ以上の取立て行為がお金の回収に結びつかないと分かったら早々に手を引く判断をすることがほとんどです。
つまり,闇金も何らかの損得勘定を行って活動しているのです。
したがって,回収に非常に苦戦する場合や摘発リスクが高まった場合,口座や携帯電話が使用できなくなるなど多くの損失が生じる場合など闇金側の「損」が大きくなればそれだけ手を引く判断を下す確率が高くなります。
そのための最も大きな要因の一つが「弁護士・司法書士が介入すること」です。
専門家の介入で直ちに取立てをストップする闇金が多い
弁護士や司法書士からの警告を受けた後にも取立てを続けるとただちに口座を凍結する手続きをとられたり,警察と連携して動かれることで刑事事件化されたりすることで損の割合がとても大きくなってしまうのです。
そうなると,専門家をつけた客など面倒で厄介なのでさっさと見切りをつけようと考える闇金が大半です。
弁護士や司法書士といった専門家による対応で,大半の闇金が取立てをやめます。
確かに,専門家が介入したにもかかわらず取立てを継続するところも存在しますが,ごく一部の悪質業者に限られますし,そういった悪質業者の場合でも数日で督促が来なくなることがほとんどです。
取引件数が多い場合には,全ての闇金から緊急連絡先へ連絡が来てしまうといった大変な局面は避けられるでしょう。
関係者にどう協力してもらえばいいのか
最善なのは,緊急連絡先として教えた方々にはこの件を打ち明け,協力をお願いすることです。
ほとんどの闇金被害者の方が「自分への取立ては我慢できるが,他の人に電話が入って迷惑をかけたくない」とお思いになることでしょう。
闇金はその心理につけこんで,本人以外の関係各所へ連絡を入れることをもっとも有効な取立て手段の一つと考えます。
しかし,逆に考えると,各緊急連絡先の協力を得てしっかり根回しをされているという状況であればそれ以上は現実的に取立てを諦めざるを得ないと考える場合が多いです。
とにかく関係者が闇金と話をしてしまわないようにするための対策をどのようにとるかが重要であり,被害解決には不可欠なのです。
どうしても打ち明けづらいという場合でも,個人情報を抜き取られ,悪質な違法業者から連絡がくる可能性があるということは説明し,関係者が絶対に闇金とは話をしないような状態にしておきましょう。
どのような説明の仕方であったとしても,業者との連絡を一切取らないようブロックししてもらえれば,それだけで解決はより容易になります。
緊急連絡先の方々には闇金の電話番号の着信拒否,メールの受信拒否,LINEのブロックなどの対策をお願いしましょう。