- ―この記事で紹介していること―
- ●後払い・ツケ払い現金化と呼ばれる手口にはどんな種類があるのか?
- ●それぞれの手口の内容はどのようなものなのか?具体例は?
相談員の横田です。2020年6月頃より,いわゆる給料ファクタリング業者の摘発が相次いで以降,摘発を免れた給料ファクタリング業者はこぞって後払いやツケ払いと呼ばれる手口へと移行しました。
給料ファクタリング(詳しくは「給料ファクタリング被害にご注意」記事を参照)については,労働者が勤務先から支払われるべき給料の債権を買い取るという点で全ての業者が共通していましたが,後払い・ツケ払いと呼ばれる手口はその内容が多岐にわたります。
そのため一般の方々にとっては非常に複雑で分かりづらい仕組みになっていましたし,実態解明が難しい巧妙な手口を用いている業者もたくさんいます。
この手口が出始めた頃は,よく内容が分からないまま取引を始めてしまい,後から酷く大変な思いをしたという方も数多くいらっしゃいました。
現在ではこの手口は新型の闇金ではないのか?という認識が広まりつつあるように感じますが,それでもまだ闇金とは違うから安心して取引をしてしまうという例も決して少なくありません。
以下,後払い・ツケ払い現金化の代表的な手口を5種類具体的にご紹介します。まさに当てはまるという場合や,細部は若干異なるが似たような取引をしているという方は,一度専門家に相談してみることをおすすめします。
なお,実際にどのような業者が存在しているかについては,下記ページにて,当事務所での対応実績とともに公開していますので,併せてご参照ください。
⇒「ツケ払い・後払い現金化業者一覧」ページ
目次
1 レビュー報酬・キャッシュバックを受け取るタイプ
これが現在最もよくあるタイプと言えるでしょう。現在流行っている後払い現金化手口の典型例と言えます。
代金後払いにて商品を購入させ,購入と同時に代金の一部をキャッシュバックすることでその日のうちに現金を手にすることができます。
代金の支払いはたいてい次の給料日に設定され,これが実質的には借金の返済に当たります。キャッシュバックの内訳として,レビュー報酬の受取りというものも多いです。
実際の具体例は以下のようなものです。
例えば,3万円のデジタルフォトを代金後払いにて購入する申込みをし,担当者とやりとりをして個人情報や勤務先の情報,緊急連絡先などを聴取された。
審査の後契約可能と言われ,メールで電子契約書が送られてきたため署名して返信すると,商品のデジタルフォトがメール添付にて送られてきた(が,そのデータは開くことが出来なかった)。
ウェブで簡単なレビューを投稿するとすぐに2万円の報酬を振り込むとのメッセージが届き,指定されたサイトに「とても分かりやすかったので,また購入したいです」と,書き添えられていた例文どおりのレビューを一言だけ投稿すると間もなく2万円が振り込まれてきた。
教材の代金3万円は次の給料日に支払って下さいと言われた。
上記のような例では,申し込むと即日2万円を受け取ることができる一方,直近の給料日に3万円を業者へ支払いしなければなりません。
また,メール添付で送られてきたデジタルフォトのデータは上記の例のように開くことができないデータであったり,それ自体ほとんど価値のない物です。
これが最もよくある形の後払い現金化手口です。
2 画像のみの査定で商品を買い取るタイプ
これは,商品の買取査定を現物を送ることなく写真のみで行い,即座にその買取代金を受け取ることが出来るというものです。
まず商品の査定が行われますが,写真のみでの査定が可能とされ,画像をメール等で送るとすぐに買取金額が提示され,即日振り込まれます。これにより即日資金が調達できるのです。
その後指定された期日までに商品を発送するかキャンセルして買取代金と違約金を支払うか,いずれかを選択させられますが,このような取引の目的は商品買取などではなくもっぱらお金の貸借にあると考えると,そもそも商品が実在しているかは問題になりません。
ですから必然的にキャンセルして代金と違約金を払うという選択に誘導されるわけです。
しかしこの際のキャンセル料が非常に高額で、買取代金の5割ほど(14日間で)に及ぶケースもあります。
つまり、現金を受け取ってから一ヶ月も経たないうちに5割の利息が発生するのと同じ計算になります。
3 経費ファクタリング・領収書買取
いわゆる経費ファクタリングの手口は,2020年まで盛んだった給料ファクタリングの別バージョンともいえます。
仕事上で立て替えた経費の精算金を受け取る権利を買取の対象とした手口です。領収書などの写真を送ることで買取代金が即日振り込まれ,支払期日に立替経費全額を業者に支払って完済ということになります。
このような手口は,以前は給料ファクタリングを営んでいた業者が業態を少し変えて営業しているケースが多く,給料ファクタリングは現在では闇金と同等の違法業者であることが明らかになった以上,注意が必要です。
4 ギフト券等転売型
アマゾンギフト券やJCBプレモカードなどが使用されることが多く,販売業者から後払いでギフト券を買い,それを業者の指定する他業者に転売することで代金を受け取ることができます。
これに対して、支払日当日に販売会社にギフト券購入代金を払うことで完済とするのです。
このタイプのものは実は比較的以前から存在していた手口であり,闇金業者が適法な取引を装うための比較的よくあるタイプです。
このページで取り上げている後払い・ツケ払い現金化サービスの源流ともいえ,比較的以前から存在する最も基本的な取引形態といえるでしょう。
売買仮装型闇金の典型例として長年用いられてきた手法で,一般消費者向けの業者から事業者向けのシステム金融業者まで,様々な闇金業者に用いられてきた手口です。
よって,その実質はまさに闇金そのものといえるのです。
これについては下記のブログ記事もご参照下さい。
⇒「アマゾンギフト券を用いる手口の闇金」
⇒「有価証券売買を仮装する事業者向けのヤミ金」
5 高額なサロン会費を徴収するタイプ
オンラインサロンに会員登録すると,業者からギフト券や物品を後払いで購入できるとともに,すぐに転売して資金を得ることもできるというものです。
一見普通の転売のように見えますが,毎月の会費が高額に設定され,支払期日にはギフト券等の購入代金に高い会費を上乗せして支払うよう要求してきます。なお売買の対象となるギフト券等は,デタラメなカード番号だけを送ってくるというところもあり,とてもお粗末な取引内容の業者も存在します。
また,ギフト券は後からお客さん自身が購入し,それを郵送させることで完済となるものもあります。これは要するに,お金ではなくギフト券で支払いをするという返済方法になります。
この他,教材やノウハウなど情報商材を受け取ることが出来るというものやツアーパックの会員権を転売するものもあり,「商品購入・キャッシュバック型」や「転売型」と併用されているものもあります。
いずれも厳しい催促に追われることに
上記で挙げたものの他にもいくつかバリエーションがありますが,ほとんどの後払い・ツケ払い現金化業者はいずれかの手口を用いて営業しています。
どのタイプの取引でも,結局は高金利での貸付けを脱法するために売買という形式を用いているだけで,実際に後払い現金化業者と取引をした際の負担は090金融などの闇金から借りた場合とほとんど変わらないという実態があります。
また,これらの業者を利用したことのある方はお分かりかと思いますが,勤務先の情報や緊急連絡先の情報など,一般的な中古品買取やギフト券販売においては普通聞かれないような情報まで聞き出されます。
各社の申込みフォームの項目や申込み時に聞かれる情報を見てみても,正直なところ闇金のそれとほぼ変わらないことがほとんどと言ってよいでしょう。
もうお分かりかと思いますが,これは支払いが滞った場合の追い込み先として利用され,闇金と同様に職場や家族・知人に取立ての電話をかけられることや,乱暴な口調で脅されることも頻発しています。
後払い現金化手口の被害を一刻も早く解決するために
ですがここで,そもそもこれらいずれの業者も,自社は闇金ではないということをアピールするためにわざわざこのような取引形式を採用していることを思い起こしましょう。
彼らの基本的なスタンスとして,あからさまに違法といえるような脅迫をはたらいたり,迷惑行為を繰り返したりすることで警察などから目をつけられ,摘発をされたりすることまでは避けようという考えが垣間見えるのです。
したがって現実として,多くの業者が当事務所のような専門家や警察などが入ってきた事案については,過度な取立てをするなど乱暴な行動にはあまり出たがりません。
後払い・ツケ払い現金化の業者も取引を続けていると,あっという間に多額の金銭を搾り取られたり,自転車操業に陥ってどうにもならない状況に陥ってしまったりしてとても大変な思いをする危険性が大きいです。
2021年8月現在においてもかなり活発に活動していて,被害に遭われている方もいまだ全国各地で後を絶ちません。
現在,後払い・ツケ払い現金化業者と取引中の方は,早めに取引をやめるよう弁護士・司法書士などに相談して,厳しい催促から逃れられるように対処しましょう。
なお,後払い・ツケ払い現金化業者は,今後も次々と業態を変えながら活動を続けてゆくものとみられます。
手口もより巧妙化し,一見悪質業者なのか分かりづらくなってしまうでしょう。
少しでもおかしいと思った時点で,早めに専門家に相談することがとても大切です。