司法書士の下東です。
被害者1人当たりの借入ヤミ金業者数は減少してきています。
以前なら,10社超は当たり前,多い方だと100社超えの方もいました。
しかし最近は1社から3社程度の方が最も多く,あまり被害が拡大しないうちにご相談頂く場合が多い印象です。
件数が多ければ多い程秘密裡のうちに解決するのは困難になりますから,ヤミ金への返済に行き詰ってしまったのであれば,他から借入れして急場を凌ぐのではなく,早めに司法書士などの専門家に相談してください。
さて,今回はヤミ金被害に関する相談をする際の注意点についてです。
一部のヤミ金を隠して相談する方
相談を頂く場合はまずは全ての取引のあるヤミ金を申告頂きます。
そうして頂いた上で,介入を希望しない業者がある方についてはその理由をお伺いするようにしています。
介入を希望しない理由は皆さんまちまちです。
・長く世話になっているから
・暴力的な言葉遣いのヤミ金なので司法書士を入れたら何をされるか分からない
・そのヤミ金にだけ絶対に連絡して欲しくない連絡先を教えている
・金利が低い業者なのでいざというときのために残しておきたい
と,大体この様な理由が多いでしょうか。
しかし,上記の理由によりそのヤミ金へ対処しないのは適切な対応ではありません。
ひとつひとつ理由を考えていきます。
長く世話になっているから
世話になっているというのは,どういう意味でしょうか。
長く取引をしていれば,返済期限について融通を利かせてくれるなどの対応はあるでしょう。
しかし,それは世話ではありません。
あなたを管理する方法として適切だからそうしているに過ぎません。
あなたから長期に亘って高い利息を搾取し続ける手段といってもいいでしょう。
犯罪被害に遭っているのに世話になっていると思ってしまうというのはなんともおめでたい話ではありますが,やはり日本人には「借りたものは返す」というモラルが根付いていますのである意味当然の思考かも知れませんね。
ヤミ金はそうした人の善意を逆手にとった卑劣な犯罪というべきなのでしょう。
では,1社だけ残すことにした場合どうなるでしょうか。
例えば5社のヤミ金対応を依頼された方が実際はもう1社あるのを隠していたケースを考えます。
隠していた1社は5万円を借りて1週間で2万5000円(年利2600%程度)の利息のヤミ金だとしましょう。
ヤミ金対応を依頼した業者については,すぐに片がつき,支払は不要となったとします。
しかし,1週間で2万5000円の利息を要する業者が残っているので,給料日まであと3週だとしても7万5000円は利息だけでかかります。
思い切って完済しようとすると更に5万円必要になり合計12万5000円の支払いになりますね。
それでもヤミ金と手を切らないといけないと思い,給料日に完済,しかし生活費が足りなくなったので,ちょうど営業電話(メール)が来た別のヤミ金からまた借りた・・・。
給料日までに利息の返済日が来たのでまた別のヤミ金から借りて支払いをした・・・。
この様なことの繰り返しで,わずか1か月後にまたヤミ金5社の借入れが出来たと相談にみえる方がいます。
嘘の様な話ですが,こういうバカなことを繰り返す方は少なくありません。
はじめから全てのヤミ金を整理をしておけばこんなことにはなりません。
暴力的な言葉遣いのヤミ金なので司法書士を入れたら何をされるか分からない
これも隠す理由の上位でしょうね。
しかし,その業者を残して他を整理したところで根本的解決にはなりません。
このパターンの残し方をしても近日中に結局手に負えなくなります。
また,暴力的な言葉遣いのヤミ金は思慮浅薄なコドモがやっていることが多く,まともな取引は期待出来ません。
相手の言い値で支払いしても完済させてもらえないことが多いため,隠すというよりは最優先で依頼すべき業者でしょう。
そのヤミ金にだけ絶対に連絡して欲しくない連絡先を教えている
この理由で整理を希望しないというのは無意味です。
ヤミ金には横のつながりがあるため(というより同一グループが複数の業者を装って貸していることが非常に多い),業者Aに教えた情報が他の全ての業者との間で共有されていることも珍しくありません。
姉の連絡先は業者Aにしか教えていなかったのに,業者Bから姉宛に嫌がらせの連絡が入るというのは良くある話です。
金利が低い業者なのでいざというときのために残しておきたい
この理由だけはまあ一応の妥当性があるかも知れませんね。
もちろん,専門家の立場からすればNGなのですが,月1割,2割程度の低利のヤミ金で,かつ,2~5万程度の支払いで完済出来るのであれば良しとしますかといったところです。
ただし,いざというときのために借りられるヤミ金を残すというメンタルでは,
一生多重債務やヤミ金問題を抱えたままになることが明白なので,その点を十分にご説明して翻意して頂くよう努めています。
まとめ
以上,ヤミ金と縁を切ると決めたのであれば,一部のみではなく全てのヤミ金と縁を切りましょうということを述べてきました。
私は,ヤミ金と付き合いながらも幸せですという方にお会いしたことがありません。
ヤミ金との取引は,例外なく人を不幸にするのです。
一方,ヤミ金と縁を切ることが出来た方は,例外なくすっきりとした表情となり,人生をリスタートさせることが出来ます。
もちろん,それまでの間に障害がある場合もあるでしょう。
しかし,ヤミ金という犯罪者と関わりを持ってしまった以上は,それは乗り越えなければならない試練です。
悔いのない人生にするためにも,ヤミ金とは一刻も早く縁を切ることをお勧めします。