【報道】個人間融資掲示板の危険性―「ネットヤミ金」のトラブル続出

公開日:2020/01/12更新日:2020/01/10

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2019年11月に,個人間融資掲示板で主に女性を狙い悪質な融資を繰り返していた男が逮捕されたと報道され,本ブログでも記事の概要をご紹介しました(「担保として下着姿の写真を要求するヤミ金逮捕」)。

この事件について中國新聞において注意喚起の記事が先日掲載されました。

記事からは,現在のインターネット掲示板での個人融資やTwitterでの個人融資の実態もうかがえます。まずは以下に一部抜粋して掲載します。

「ネットヤミ金」横行 超高金利・下着写真を要求…個人間のトラブル増

インターネットの掲示板で客を探し、無登録で融資を繰り返したとして萩市の男性自衛官が広島県警に逮捕される事件があった。女性を狙い、遊ぶ金欲しさから超高金利で利息を稼ぎ、下着の写真を要求することもあったという。面識のない人同士が金を貸し借りするネット上の個人間融資。性犯罪の被害も生みかねない「ネットヤミ金」の危うい実態が浮かんだ。

県警によると、自衛官が主に使っていた掲示板「レンタルキャッシュ」。19日、記者がトップページを開くと、「広島県に住む38歳の専業主婦」と名乗る書き込みが出てきた。

「希望額は5万円。用途は家のローンなどの支払い」「ギリギリまで金策をしたのですが、なかなかお金がつくれず投稿してしまいました」

この投稿には、連絡先のメールアドレスや月収、身分証明書として社会保険証と年金手帳があることも記されていた。掲示板は公開されており、誰でも見られる。書き込みを見て「融資したい」と思った人がメールで連絡し、後は個別にやりとりする仕組みだ。

記者が3日間掲示板を見た限りでは、全国各地の男女から1日30~40件の投稿があった。融資希望額は1万円程度から数百万円と幅広く20~30代が多い。「自己破産して金融機関から借りられない」「病気で働けず家賃が払えない」と困窮を訴える記述もあった。
▽既婚女性を狙う
県警によると、逮捕された自衛官は5~6年前、この掲示板を見て「自分でもできる」と融資を開始。逃げるのが難しく貸し倒れのリスクが少ないとして、子どものいる既婚者の女性に絞り、健康保険証などの写しを身分証として送らせた上で現金を振り込んでいた。最初は少額で貸し、相手の返済状況に応じて貸付額を上げていたという。

(以下略)

※中國新聞デジタル(中川雅晴,今井裕希) 19/12/30(https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=600816&comment_sub_id=0&category_id=256)

そもそも"個人間融資"とは何なのか?

個人間融資とはそもそもどういうものなのでしょうか。

投資したい人とお金を必要とする人とをネット上で結びつけるサービスをソーシャルレンディングと呼びますが,個人間融資という言葉も元々はソーシャルレンディングのことを指して用いられていました。

いわゆる貸付型のクラウドファンディングの一つであり,運営会社が多くの個人の投資家から広くお金を集め,それを元に資金調達を必要とする企業や個人に融資を行うというサービスです。

運営会社は資金需要者の事業内容や信用力などの情報を提供し,個々の投資家がそれを元に出資に関する判断を下すことができます。

借りたい側にとっては,貸金業者や銀行から融資を受けるよりも比較的低い金利で借りられたり,融資を受けられるかどうかについてのハードルも低いというメリットがあります。

借り手側は会社など法人であることが多いものの,個人である場合もあります。特に後者がよりイメージ通りと思いますが,お金を運用するために貸したい個人とお金を調達するために借りたい個人とを結びつけるという意味で個人間融資とかP2P(Peer to Peer)レンディングという言葉が用いられています。

日本ではmaneo株式会社を先駆けとして,SBIソーシャルレンディング株式会社やロードスターキャピタル株式会社(OwnersBook),クラウドクレジット株式会社,などの運営会社があります。

国内では今から12~3年ほど前からみられるようになりましたが,実際個人間での投資・資金調達の手段としては日本であまり普及せず,特に一般の消費者にとっては馴染みの薄いサービスといえるでしょう(上記のmaneoがソーシャルレンディング事業を開始した当初運営していた個人間融資のサービスは多くの困難に見舞われ,わずか2~3年ほどで個人向け融資の事業からは撤退しています)。

その後国内では法人への投資のためのツールとして普及していったため,「個人間融資」という言葉のイメージとは今や異なるかたちで展開していきます。

なお,借り手の保護や投資家の保護という観点から,運営者には貸金業の登録や第二種金融商品取引業の登録が必要とされています。

貸金業者などと異なり,融資資金が一会社や一個人ではなく多数の個人により出資されることから,お金の貸付けというよりは投資のためのサービスという意味合いが強かったといえるでしょう。

元々このような意味合いで用いられたものであったのが,個人向けのクラウドファンディングの伸び悩みにより衰え,その後単なる個人と個人の私的なお金の貸し借りを意味するだけのものになってしまいました。

そして,挙句の果てには今や"個人間融資といえば闇金・違法金融"とまで言えるような意味に成り下がってしまったという現状があります。

ネット検索で「個人間融資」と検索しても,「闇金」とか「詐欺」「ひととき融資」といった情報や上記記事にも書かれているような個人間融資掲示板ばかりが見つかります。

個人間融資掲示板の利用はリスクがあまりにも大きい

逮捕された男は「レンタルキャッシュ」という個人間融資掲示板をよく使い,全国の多数の人々に金を貸していたようです。

利息が明らかに高いという点と,貸金業登録もなく業としてお金の貸付けをしていたことからもまぎれもなく闇金であるというべきでしょう。

また,相手の返済状況に応じて貸付金額を上げていたというのも,闇金がよく言う「少額で実績をつければ大口融資が可能」などという売り文句とも同じです。

さらに卑劣なのが,下着の写真を担保に取って金を貸していたという点や,逃げられるリスクが少ないよう子どものいる既婚女性を狙っていたという点です。

このようないかにも闇金らしいやり口から推測すると,逮捕された男は闇金業者の手口についてはよく知っていたようにみえます。

まったくの素人がたまたまネット上で知り合った人とやりとりをしたというのとはわけが違います。あるいは自らも以前このようなところで闇金を使ったことがあったのかもしれません。

いずれにせよ,「自分でもできる」などと安易に考えて,ヤミ金融という悪質犯罪に手を染めてしまったことを考えると,このようなサービスを利用すること自体危険すぎます。

つまりは,貸す側にとっても借りる側にとってもこのサービスを利用することには相当に大きなリスクが付きまとうということなのです。

個人間融資の掲示板やSNSは闇金や詐欺の温床である

個人間融資掲示板を利用する危険性につき,以前から何度か本ブログでも取り上げました(「個人間融資は闇金?掲示板は安全といえるのか」「Twitter・掲示板の個人間融資被害」など)。

こういった掲示板は貸金業法に規定される金銭の貸借の媒介を業として行うもの(同法第2条第1項参照)であるといえます。 したがってそもそも貸金業登録が必要なはずですが,ほぼすべての個人間融資掲示板には登録番号の記載もなく,登録有りとの情報も見当たりません。

上記報道にある「レンタルキャッシュ」という掲示板のような,個人間融資掲示板を利用している者には違法行為を行う目的をもって書き込みをしている者,特に闇金業者や詐欺業者などが多数含まれていると言えます。

また,現在もTwitterをはじめとするSNSの中には個人融資を持ち掛けるアカウントが溢れている状況があります。

金融庁などもSNSを利用した闇金や詐欺に対する注意喚起を積極的に実施し始め,特に利用者の多い若年層への警戒の呼びかけを強めています(「10代の女が逮捕された「個人間融資詐欺」の手口とは」もご覧ください)。

一時期はウェブ上でも野放しといえるような状態があり,なかなか規制が追い付かないという状況がいまだに続いているといえるでしょう。

個人間融資掲示板やTwitter等SNSはまさに闇金や詐欺の温床ともいえます。上掲記事のような大きなトラブルに巻き込まれるリスクが非常に大きいです。

実際に当事務所でも,これらのサービスを通じて取引を始めた相手が闇金業者だったり,純粋な一個人であっても闇金業者と同等の悪質な請求や詐欺行為をされたという相談が絶えません。

絶対に個人間融資掲示板や個人融資Twitterなどは利用しないでください。

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